お疲れ様 ページ33
…優しい、手のひらのぬくもりを感じた。
頬を伝わせるように丁寧に撫で、ゲソの先まで包み込む…
どこか、懐かしさを思い出させるような…
「アーミーくん、やっと起きてくれた」
…吾輩はいつの間にか、懐かしさと恐怖の感情を、履き違えていたようだ。
「安心して、もう何もしないから」
近づくメット。
あの時気を失ってさえいなければ…
床に横たわったまま、彼女に目をやった。
…これ以上は体力的にも精神的にも厳しいだろう。
それは他でもない、吾輩が一番分かっていることだ。
「正直アロハくんみたいに一晩中気絶するものだと思ってたからさ。アーミーくんは本当に我慢強いね」
……我慢強い?
痩せ我慢の域など、とっくに…超えているというのに。
「…は…はは…」
乾いた笑いが溢れた。
大きな絶望を秘めた、掠れゆく声で。
「…負…けた……のか…」
──敗北。
この二文字は、吾輩にはとても重かった。
「すまない…」
照明に照らされたままのエフテンは、リスポーン地点から微動だにしていなかった。
手を伸ばす。
届く筈もないのに。
しかし、異常なほどに震えるその手は、肘から下が捻れ、真っ青になっていた。
そっと彼女に握られる。
…それが左腕だということに痛みと共に気づく。
彼女は言い放った。
「まあアーミーくんお疲れ様。これで終わりだよ」
…終わり?
おかしな汗がどっと吹き出る。
「もう帰っていいよ」
心臓の鼓動が早まるのを感じた。
…貴様、アロハに同じことを言って何をした…?
「逃げないの?君なら賢明な判断ができると思ったけど」
「……分かっ…た…」
先程までと雰囲気が違う。
なんだ?
どういう意図で…
「……ぁ」
身体を起こそうと右手をつく。
だが、少しだけ頭が浮くものの、首から下が床に吸いつき、まるで動かない。
何度も力を込めるが、それは無意味な行動に過ぎなかった。
「あ、れ…」
解放…されるというのに。
吾輩の身体は思った以上に弱っていた。
…焦る。
何故?
どうして?
今動かないでいつ動く…?
逃げなければ…いけないのに。
エフテンを…早く…
助けなければ…
「苦しい?」
くすりと笑みをこぼし、彼女は言った。
今なら、分かる。
「…何…を…」
小刻みに震える顔。
だんだん血の気が引いていくのを感じた。
「アロハくん、本当はあんな味じゃないんだよね」
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しゃぼん🫧 コロイカダイスキ - ニヤニヤ…。 (3月5日 18時) (レス) @page33 id: 4cc781ec23 (このIDを非表示/違反報告)
あすあま(プロフ) - mariaさん» ふふ…毎度何かと世話焼きな彼、素敵ですよね!亀ペースですが、彼らの行く末を気長にお待ちくだされば幸いです。 (8月5日 23時) (レス) id: 5f256feba8 (このIDを非表示/違反報告)
maria - マスクくんの反応が気になるのでマスクくんお願いします! (8月4日 18時) (レス) @page35 id: 4c43ea808a (このIDを非表示/違反報告)
あすあま(プロフ) - アーミー好きさん» こちらこそキャラの魅力を感じてもらえて嬉しい限りです!今後もぼちぼち頑張りますので、是非ともよろしくお願いします! (6月27日 19時) (レス) id: 5f256feba8 (このIDを非表示/違反報告)
アーミー好き - これとても好きです‼︎自分の好きなキャラだし自分の好きな展開というか...とにかく好きですありがとうございます‼︎ (6月27日 17時) (レス) @page35 id: 3264f1cacf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あすあま | 作成日時:2023年4月28日 4時