えいっ ページ31
「がぁッ…!?」
溢れる雫。
さらに、その勢いで腹部にめり込む奴の足。
「げほッ…がは、ぁっ…」
冷たい床に転がり、必死になって痛みに耐えた。
「こういうのは直で感じるに限るよね」
奴は身体を起こし、厚着を脱ぎ捨て、軽快なステップを踏んだ。
「う…ぐぅ…」
壁に手をつき、なんとか重い腰を上げる。
「さっきまでの威勢のよさはどうなったのかな〜?」
メットについたオレンジのインクを拭い、構えた。
奴は、吾輩の攻撃待ちのようだ。
「はぁ、はぁッ…」
血塗れのF-190を脱ぎ捨てると同時に踏み込み、手を振りかぶった。
しかしながら、当たりはしない。
腰を屈め、奴のカウンターを避ける。
腹部がズキリと痛んだ。
「やっぱり良い動きしてるね」
今度は向こうから仕掛けてきた。
細身でありながら筋肉質な腕と足。
素早く、重く、時にフェイントを繰り出す様は、彼女の残虐な性格そのもののようだった。
ギリギリで避け、攻撃をなんとか受け流す。
「でも、慣れてないよねっ!」
振り下ろされた足を受け止めたのは、肩だった。
あまりの衝撃に意識を手放しそうになる。
「………それが…どうした?」
腕を奴の身体に回し、脇腹を突く。
だが、手ごたえは感じられなかった。
「君は柔軟性が足りてないってことだよ」
体勢を立て直そうとした瞬間、間近に迫る奴の顔。
また頭突きかと反射的に身体が後ろに反りかえった。
「ぐぇ…ッ!?」
首元のネクタイを掴み、引っ張られる。
重心と真逆に引く彼女に抵抗しようと、無意識に手を伸ばした。
「正攻法だけが全てじゃない、でしょ?」
ガラ空きになった腹に叩き込まれる拳。
直後に引っ掛けられる足。
…吾輩の視界は暗転した。
このまま倒れ込んでしまえば、どう決着するかは目に見えている。
「ん?」
倒れ際に彼女の腕を掴む。
足技を繰り出した後の彼女の体勢は最も容易く崩すことができた。
どさりと互いの身体が床に打ち付けられる。
「げほっ…随分と…好き勝手…してくれた…なぁッ…」
ゆらりと身体を起こし、うつ伏せに倒れる彼女に掴み掛かる。
先程とは比にならない力量で締め上げた。
「…なかなかやるじゃん」
しかし、足が絡みつき、反対に吾輩が激しく押し倒される形となった。
奴は吾輩に馬乗りになり、腰が、内臓が悲鳴を上げた。
「貴様…だけは…ッ…!」
締め付けられる身体。
奴の拘束から逃れようともがく。
絶対に諦めてなるものか…
ここで、勝たねば…
「えいっ」
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しゃぼん🫧 コロイカダイスキ - ニヤニヤ…。 (3月5日 18時) (レス) @page33 id: 4cc781ec23 (このIDを非表示/違反報告)
あすあま(プロフ) - mariaさん» ふふ…毎度何かと世話焼きな彼、素敵ですよね!亀ペースですが、彼らの行く末を気長にお待ちくだされば幸いです。 (8月5日 23時) (レス) id: 5f256feba8 (このIDを非表示/違反報告)
maria - マスクくんの反応が気になるのでマスクくんお願いします! (8月4日 18時) (レス) @page35 id: 4c43ea808a (このIDを非表示/違反報告)
あすあま(プロフ) - アーミー好きさん» こちらこそキャラの魅力を感じてもらえて嬉しい限りです!今後もぼちぼち頑張りますので、是非ともよろしくお願いします! (6月27日 19時) (レス) id: 5f256feba8 (このIDを非表示/違反報告)
アーミー好き - これとても好きです‼︎自分の好きなキャラだし自分の好きな展開というか...とにかく好きですありがとうございます‼︎ (6月27日 17時) (レス) @page35 id: 3264f1cacf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あすあま | 作成日時:2023年4月28日 4時