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なにもできない ページ29

地獄、だった。
気が遠くなり、何度も気絶しそうになった。
しかし、目の前の現実から、背くことはできなかった。

叫ぶ声、苦しむ声、嘆く声。
吾輩の知っている彼女の姿は、既に無かった。
無力だった。
吾輩は、彼女を巻き込んだ身でありながら、何もできなかったのだ。

エフテンは、何度も吾輩を呼んだ。
声を上げることも、身体一つ動かすこともできない吾輩を、ずっと心配し続けていた。
その声はだんだんと小さくなり、彼女が弱っていく様を、吾輩を呼ぶ声がいつからか助けを求めるものになっていく様を…ただ見ていた。

奴は、タイミングをずらしたり、時に希望を持たせるような行動をとったりして、エフテンを落とし続けた。
その度に、悲鳴はより一層大きなものとなった。

…ある時、声が聞こえなくなった。
エフテンは奴に落とされる前に、ばたりと倒れたのだ。
その場から動かず、足や指先を時折ひくりと痙攣させていた。
半開きの目、脱力しきったその姿に、生気は感じられない。

「……エフテン…っ」

やっとの思いで絞り出した声も、彼女に届くことはなかった。

「あーあ、ついに限界来ちゃったか。早かったな〜」

力の抜けたエフテンの身体は、ずるりとリスポーン地点から落ち、数秒も経たずにギアとインクが弾け飛んだ。

「アロハくんの方がもっともっと粘ってたけど」

復活したエフテンは、先程のように倒れ込み、そこから動き出すことはなかった。

「アーミーくん、君は大切な大切なチームメイトすら守れなかった…残念ながら、ね」

「………吾輩、が…」

「エフテンちゃん、ずっと隊長さんに助けを求めてたのに…可哀想」

かつて、これほどまでの屈辱を直に噛み締めたことがあっただろうか。
どれだけ報われずして秘めた悔しさよりも、それは、黒く、ドロドロに煮詰められたような醜い感情だった。

「安心してよ、死んではないから…今はね」

奴の言葉を境に、吾輩が今まで持ち堪えていた理性が崩れ落ちる。

怒りは事が始まる前から既に吾輩を蝕んでいた。
しかし、それでも耐えようと、絶望してはいけない、屈してはいけない、奴の思い通りになどなってはならないと、必死になって抑えていた。
もしかすると、彼女に本来の姿を見せたくなかっただけなのかもしれない。


「アーミーくん、君は本当に…………………」

勝負→←僕は



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しゃぼん🫧 コロイカダイスキ - ニヤニヤ…。 (3月5日 18時) (レス) @page33 id: 4cc781ec23 (このIDを非表示/違反報告)
あすあま(プロフ) - mariaさん» ふふ…毎度何かと世話焼きな彼、素敵ですよね!亀ペースですが、彼らの行く末を気長にお待ちくだされば幸いです。 (8月5日 23時) (レス) id: 5f256feba8 (このIDを非表示/違反報告)
maria - マスクくんの反応が気になるのでマスクくんお願いします! (8月4日 18時) (レス) @page35 id: 4c43ea808a (このIDを非表示/違反報告)
あすあま(プロフ) - アーミー好きさん» こちらこそキャラの魅力を感じてもらえて嬉しい限りです!今後もぼちぼち頑張りますので、是非ともよろしくお願いします! (6月27日 19時) (レス) id: 5f256feba8 (このIDを非表示/違反報告)
アーミー好き - これとても好きです‼︎自分の好きなキャラだし自分の好きな展開というか...とにかく好きですありがとうございます‼︎ (6月27日 17時) (レス) @page35 id: 3264f1cacf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あすあま | 作成日時:2023年4月28日 4時

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