コロイカ虐待

僕は ページ28

こんな自分、知らなきゃよかった。

僕は最低だ。
柔軟に自由に生きる、世渡り上手なあのパリピ。
彼の弱った姿に、興奮した僕がいる。

戻れない、もう戻れない…そんな気さえした。
今までの、真面目な、冷静な、模範的なボーイとして生きてきたこの僕が。

この…僕が…



ベッドから飛び降り、イカホを投げ捨てる。
あんな…あんな動画！
二度と見るものか！！

僕は、隊長の隣でスコープを構え続けてきた。
…それは…これからも、ずっとそうだ！

こんな感情、要らない。
だって、おかしい。
…おかしいんだよ！！



「あっ………ぶっ！？」
顔に、衝撃が走った。
突然の事態に頭が真っ白になる。

やけになった僕は、周りの確認もせずに突き進み、つまずいて顔面を壁へ強く打ち付けていた。

そのまま壁に手をつき、鼻を押さえる。
手指の隙間からは、とろりと液体が垂れ落ちた。
それはフク、床に染みつく。

「いっ…痛い…いだぃ…っ」

あまりにどうしようもない痛みに、身を捩る。
その時、彼の表情がよぎった。

そうだ、そうだ…！
怪我をすると、こんなにも痛いんだ。
痛いから、悲鳴をあげるんだ。
痛いから、顔を歪めるんだ。

僕は、人の不幸を嘲笑うような性分なのか？
違うだろ、B。


じわりと涙が出てきた。
我ながら、なんて情けないんだろう。

おぼつかない足取りで、洗面所へと向かった。

そう…こんな感情、間違ってる。
だって、痛いだろ。
誰も得しない…ただ単に痛いだけじゃないか…

耳を刺激する機械音声。

ノイズ。



「アロハくんさ、今すっごく良い顔してるよ？」



鏡に映る、僕を見た。
血で濡れた、手を退ける。

目と目が合った。

痛々しい。
そんな自分が













い


と


お


し


い












「ひ…」

背筋が凍る。
こんな自分が、恐ろしくなった。

「ぃ…違う…！」

違う違う違う違う違う違う！！！

僕は！

オレンジチームの！

隊長の…

腕となり、目となる…

スコープ使い…

これは、僕じゃない…

顔を、赤らめるな…！

表情筋を、緩めるな…！

気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い


壁に再度顔を打ち付ける。
ほら、痛い…こんなにもだ！
これでもまだ目が覚めないか！？

これでも、これでも…ッ！


血が、壁を伝った。
顔を濡らした。
フクに染みついた。


ほ、ほら…涙で顔が、ぐしゃぐしゃじゃないか…

B…なんとか言えよ、僕…



…心のどこかで隊長に助けを求める僕がいた。

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