コロイカ虐待

何故 ページ26

「や、やめ…て…やめて！」

感情が昂ったエフテンの叫び声。

「た、隊長！隊長が…隊長が死んじゃう…死んじゃうよぉ…！」

普段の彼女からはとても考えられない慌てようだ。

「もう生意気なこと言わない…！だから…やめて、やめてください…お願い…します…」

泣いて…いるのか？

エフテン…お前は、いつもチームを支えてくれる、優秀な隊員だろう…？
そんな、弱気な姿を簡単に見せて…どうする。

「私はどうなってもいい！何でもするから！あ、足を止めて！…もう蹴らないでッ！！殴らないでぇッ！！！」

なあ…
隊員にこんな顔をさせるなんて…
情けないとは思わないか…？

「ねぇ…アーミーくん…ほら、もっと良い顔してよ」

脇腹、みぞおち、胸、腰…
瞼、頬、鼻、顎…

いつの間にか…だ。
床にびっしりと飛び散っていたアロハの血は…
そもそも、元から…だったか…？
随分と黄色味がかっている…ような…




あ…

あれ…

待って、くれ…

な…何故、吾輩はこんな目に遭っているのだ…？

誰か…誰でもいい…お、教えてくれ…


殴られる度に、蹴られる度に、びくりと指先が動く。
足先にかけて身体の節々が悲鳴をあげ、ヒクつく。
声にならない声が、そして体内を流れる液体が、あふれ、こぼれていく。


誰か…だ、れか…

アロハ…ライダー…マスク…スカル…

「…ぅ…」

エフテン…セーラーB…セーラーW…

「ぁ……が…」


父上…母上…


「………………」


何故か…明確に、明瞭に、彼らの姿が浮かんだ。

ゴーグル…？
メガネ…ヘッドホン…ニットキャップ…


…お、おかしい…
でも、だって…彼らは…




「は…っ、…か、ひゅ……ご……ほっ…」

不規則な呼吸。
今にも意識を失ってしまいそうなほどに、朦朧としている中で。
荒い、荒い…声混じりの呼吸がよく響いた。

腫れ上がった重い瞼を開ける。
奴はもう、殴るのを、蹴るのをやめていた。

僅かな安堵と共に、視界に入るオレンジ…
それは奴の手袋にも滲んでおり、辺り一面を染めあげていた。

…油断は…できない…
何度も、何度も攻撃が来るだろうと、今できる最大限の受け身をとった。
最大限の受け身…それは、目を…閉じること…

だが、奴はこれ以上暴力を振るわなかった。




終わった…のか…？

言葉では言い表すことのできない、今まで感じたこともないような、じわりとした酷い痛み。
息をする度に、激痛が走った。




…吾輩は、もう疲れていた。

目を、閉じてからは…
そのまま…

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