ピンク ページ24
「はい、おかわり」
無理矢理こじ開けられる口。
この際痛みなどは、堪える他ないのだ。
頭の中で渦が巻く様に、小刻みに震えあがる心臓の鼓動の早いこと。
「むぐっ…ぅ」
ああ、あぁ…気分が悪い。
本能が喉を通すまいと、抵抗する。
僅かにでも油断してしまえば、今頃吐き出していることだろう。
全身から溢れ出る大量の冷や汗。
身体だって、動かせない。
「これがアロハくんの味なんだよ。ワサビでもつけた方が良かったかな?」
実にふざけた態度だ。
だが、これは吾輩だけの事案ではない。
エフテンを、守るためなのだ…だから、
耐えろ。
溺れさせられることよりも、純粋な暴力よりも、エフテンを守るためならば、こんなの他事より容易いことだ。
変に私情を挟むから、おかしくなるのだ。
…彼女を守ろうとする気持ちすらも、私情であるのだが。
同じことをいくらか繰り返し、ふと皿を見る。
あと一欠片。
アロハのゲソの多くは、プールで見つかった。
これで…
「味わってね」
口の中でとろけるアロハのゲソ。
油断はしていないつもりだった。
だが、これが最後だと思うと…
「あ、ドリンクもあるよ」
「…んっ!?」
こじ開けられた口に、押し付けられるコップ。
津波の様にして、流し込まれた液体に。
そしてその、あまりに濁った酷い味に。
ゲソに慣れた吾輩の舌は、翻弄される。
堰き止めることなく流れたピンクの液体は、
行き場をなくしたピンクの液体は…
「か…っ」
限界を迎えさせた。
「ぅ、げ…」
一瞬にして膨れあがった莫大な負の感情。
既に限界を越えた精神。
必死に抑えつけていたものが、流されていく。
吾輩に、それ以上耐える力は残されていなかった。
「…げほっ!?…ぐぇっ…が、はっ!?」
飛び散るピンクの液体。
「ごほっ!?…うぐ、ぇ…うぇっ…」
咽せる。
吐き出す。
何度も何度も何度も。
濁っていても尚鮮やかなピンクは、奴を彩り、フクを濡らした。
「はっ、ぁ…う…ええっ…ぇえっ!」
涙が出るほど。
目が充血しきるほど。
まともに呼吸ができなくなるほど。
決して簡単に止められるものではなかった。
「そんなに不味かった?あーあ、血でびしょ濡れじゃん」
血、やはり、やはり…彼の、血…
「うぅ、お…えぇ…っ」
頭の中を巡り巡る悪思考。
「汚れちゃったなー」
ピンクの液体まみれのメットを拭きながら、奴は言い放った。
「…失敗だね、アーミーくん?」
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しゃぼん🫧 コロイカダイスキ - ニヤニヤ…。 (3月5日 18時) (レス) @page33 id: 4cc781ec23 (このIDを非表示/違反報告)
あすあま(プロフ) - mariaさん» ふふ…毎度何かと世話焼きな彼、素敵ですよね!亀ペースですが、彼らの行く末を気長にお待ちくだされば幸いです。 (8月5日 23時) (レス) id: 5f256feba8 (このIDを非表示/違反報告)
maria - マスクくんの反応が気になるのでマスクくんお願いします! (8月4日 18時) (レス) @page35 id: 4c43ea808a (このIDを非表示/違反報告)
あすあま(プロフ) - アーミー好きさん» こちらこそキャラの魅力を感じてもらえて嬉しい限りです!今後もぼちぼち頑張りますので、是非ともよろしくお願いします! (6月27日 19時) (レス) id: 5f256feba8 (このIDを非表示/違反報告)
アーミー好き - これとても好きです‼︎自分の好きなキャラだし自分の好きな展開というか...とにかく好きですありがとうございます‼︎ (6月27日 17時) (レス) @page35 id: 3264f1cacf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あすあま | 作成日時:2023年4月28日 4時