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んぐっ ページ23

だんだん現実味を帯びてくる頬の痛み。
口の中ではじわりと液が溢れ出た。
何が起きたか理解するのに、多少の時間を必要とする。



…今、蹴られたのか?

話していた途中だった為か、口を切ってしまった様で、何も言い返せない。
口から溢れてしまいそうになる、体液。
痛みは留まることを知らずして…

「…っ」

耐えろ、耐えなければならないのだ。
苦痛に顔を歪めてしまえば、奴の思い通りなのだから。

「反応薄いなぁ、アーミーくんはアロハくんと違って我慢強いんだね」

そう言って奴は吾輩の頬を撫でた。
刺激される、痛み。
ぞくりと鳥肌が立ち、激しく嫌悪感を覚える。

「アロハくんは表情豊かで面白かったけど」
頬を撫でていた手は少しずつ下に移動し、吾輩の口角を上げるように引っ張った。
口の傷が、開く。
…ああ。
笑えない。
引き攣った顔。
奴を睨むことしか、できないのだ。

「怖い顔しないの。エフテンちゃんを助けるんでしょ」

奴は冷蔵庫と思われるものから何かを取り出した。



「これね、アロハくんのゲソ、だよ」

…視界を潤す、ピンクがそこに。

何も、見えない。
考えられない。
フォークが突き刺される様なんて。
コップに注がれたピンクの液体なんて。
急に、催す吐き気。
ナイフで切られ、皿に乗せられたそれは…

「お腹、空いてる?」
まるで食べ物であるかのように。

「た…隊長…」
エフテンが、青ざめた顔でこちらを見ている。

「エ…フテンっ!吾輩のことは…気にするなっ!」
声を発すると共に顔が痛む。
彼女は、優しい。
優しいが故に…また、先程のようになりかねない。
それは、それだけは避けなければならないのだ。

「あーん」
突き立てられるフォーク。
「…んぐっ!?」
さらに容赦なく口に詰め込まれる、アロハのゲソ。
「ぅ…くっ…」
…冷たい。
普段の彼の様子を思い出す。
毎日丁寧に手入れされていたゲソは、滑らかな、艶やかな舌触りで…切り口からは止めどなく汁が溢れていた。

「ちゃんと食べ切らないと、エフテンちゃんがどうなっても知らないよ?」

抵抗の末、口から溢れそうな汁を、留めることにする。
自分の傷口から滲み出るそれと、絡み合い、最悪の組合せを成した。
「…っ」
今すぐにでも吐き捨ててしまいそうになる。
だが、そんなことをしてしまえば…

フラッシュバックするあの映像。
悲惨な、残虐な、彼の…

噛み締める。
ぐちゃり、ぬめりとした気色の悪さ。



…吾輩は、それを飲み込んだ。

ピンク→←覚悟



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しゃぼん🫧 コロイカダイスキ - ニヤニヤ…。 (3月5日 18時) (レス) @page33 id: 4cc781ec23 (このIDを非表示/違反報告)
あすあま(プロフ) - mariaさん» ふふ…毎度何かと世話焼きな彼、素敵ですよね!亀ペースですが、彼らの行く末を気長にお待ちくだされば幸いです。 (8月5日 23時) (レス) id: 5f256feba8 (このIDを非表示/違反報告)
maria - マスクくんの反応が気になるのでマスクくんお願いします! (8月4日 18時) (レス) @page35 id: 4c43ea808a (このIDを非表示/違反報告)
あすあま(プロフ) - アーミー好きさん» こちらこそキャラの魅力を感じてもらえて嬉しい限りです!今後もぼちぼち頑張りますので、是非ともよろしくお願いします! (6月27日 19時) (レス) id: 5f256feba8 (このIDを非表示/違反報告)
アーミー好き - これとても好きです‼︎自分の好きなキャラだし自分の好きな展開というか...とにかく好きですありがとうございます‼︎ (6月27日 17時) (レス) @page35 id: 3264f1cacf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あすあま | 作成日時:2023年4月28日 4時

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