覚悟 ページ22
「えへへ、アーミーくんならエフテンちゃんを庇うって信じてたよ」
先程と打って変わった馴れ馴れしい口調、そして甘い声質に戦慄する。
奴はこちらに歩き始めた。
…こんなことをして、何が楽しい?
言葉を発しようと開けた口は、そこで止まる。
吾輩は、恐れているのか。
奴の所業を知ってしまったが故に。
アロハの酷い有様を見てしまったが故に。
それとも、いや、どちらにせよ…
…決して無事では、済まされぬだろうな。
「ぁ…もう、やめろ…!」
リスポーン地点に姿を現すエフテン。
息遣いの荒い、彼女の声が響いた。
「貴様っ!…隊長にまで…手出ししたら…」
奴は、振り向いた。
コキリと首を曲げながら。
「んー?」
その場の空気が、凍りつく。
「許さ…」
エフテンが言葉を言い終える前に、奴はわざとらしく口を開いた。
「あーあ、せっかくアーミーくんが身体を張って守ろうとしてくれたのにね。自分で台無しにしちゃうだなんて」
…迂闊だった。
「全く、エフテンちゃんったら」
奴は、まともじゃないのだ。
天井からゆらりと速度を増して落ちてくる、巨大な物体。
「な…っ!?」
疲れを帯びた目を丸くする。
エフテンの身長を優に超えるそれは、なんとも強い力で彼女を押し出した。
重力に逆らう事なく落ちていく。
そして、着水。
予想外の出来事に、彼女は尚苦しみの表情を浮かべた。
「あぁ…!」
何もできない、吾輩には何もできないのだ。
エフテンが、すぐ側で助けを求めているのに。
無力な自分を悔いた。
だが、状況は変わらない。
「貴様の…貴様の狙いは吾輩だろう!?」
喉まで出かかっていた言葉が溢れ出る。
「何故エフテンまで巻き込んだのだ!エフテンが一体、何をしたというのだ!?」
恐怖と怒りに支配される。
「アロハをあんな目に合わせたのも、貴様だろう!」
彼女の動きがピタリと止まった。
「吾輩なら好きなようにすれぱいい!だが…」
復活したエフテンが再び水槽に落ちる音。
目につくエフテンの辛そうな表情。
…それと共に、今まで感じた事もないような衝撃が迸った。
何、が…
視界が揺らぐ。
三半規管が異常をきたす。
意識がまるで弾き飛ばされたような。
言葉にすら、悲鳴にすらなっていない、声がこぼれた。
…痛み。
痛みだ。
頬が、燃えるように熱い。
いつの間にか床に向けられた視線を奴に合わせる。
目につく振り下げられた足…
「じゃ、そろそろアーミーくんのお願い通りにしてあげるね」
覚悟は…していただろう?
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しゃぼん🫧 コロイカダイスキ - ニヤニヤ…。 (3月5日 18時) (レス) @page33 id: 4cc781ec23 (このIDを非表示/違反報告)
あすあま(プロフ) - mariaさん» ふふ…毎度何かと世話焼きな彼、素敵ですよね!亀ペースですが、彼らの行く末を気長にお待ちくだされば幸いです。 (8月5日 23時) (レス) id: 5f256feba8 (このIDを非表示/違反報告)
maria - マスクくんの反応が気になるのでマスクくんお願いします! (8月4日 18時) (レス) @page35 id: 4c43ea808a (このIDを非表示/違反報告)
あすあま(プロフ) - アーミー好きさん» こちらこそキャラの魅力を感じてもらえて嬉しい限りです!今後もぼちぼち頑張りますので、是非ともよろしくお願いします! (6月27日 19時) (レス) id: 5f256feba8 (このIDを非表示/違反報告)
アーミー好き - これとても好きです‼︎自分の好きなキャラだし自分の好きな展開というか...とにかく好きですありがとうございます‼︎ (6月27日 17時) (レス) @page35 id: 3264f1cacf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あすあま | 作成日時:2023年4月28日 4時