あ ページ17
病院の帰り道、オクタグラスと別れたムギは、よたよたと広場の通りを歩いていた。
彼女の視線は常に地面に向けられている。
病院で医者に告げられたことは、アロハの症状はただの発作などではなかったということ。
何が原因なのかと聞いたが、それはまだ判明していないと言われてしまった。
「…」
心配事だけが増え、不安が募っていく。
アロハは…
あそこまで恨まれるようなことをしていたのか？
いいや、そんなはずはない…
「ぅ…こんなのってないよぉ…」
また、思い返して涙が溢れてしまった。
「私達はただ、楽しく過ごしていただけなのに…」
どうして、彼があんな仕打ちを受けたのか。
「日常を返して…」
周りには聞こえないような掠れた声が、こぼれる。
その時だった。
「きゃ…っ」
路地裏から飛び出した誰かとぶつかってしまった。
後ろに一歩後退りするも、なんとか踏み止まる。
ムギは目を見開いた。
なぜなら、飛び出して来たのは他でもない…
「ダイバー！？ずっとどこにいた、の…」
大切なチームメイトだからだ。
しかし、ダイバーは大きく体をよろめかせながら、ムギに目をやることもなく、そのまま反対方向に駆け出してしまった。
「待って！今アロハが大変なことに…！」
聞こえているのかいないのか、彼はそれから振り向くことなく、ふらついた足取りで走り去った。
ムギはダイバーを追いかけようとしたものの、その速さに追いつくことは出来ず、すぐ見失ってしまった。
彼を引き止めようと伸ばした腕が、だらんと落ちる。
「…ダイバー…なんで無視するの…」
ムギの唇がキュッと締まる。
涙はもう出なかったが、俯いてしまった。
ムギは思った。
あの事件をきっかけにアロハだけでなく、自分たちの関係までも崩れてしまうのではないかと。
怖くなった。
生きた心地がしなかった。
それと同時に、慌てて駆けていったダイバーの姿を思い返した。
何故ダイバーはムギのことを気にかけなかったのか。
…ダイバーはガールを無視するような無礼なチームメイトだったか？
あのダイバーが、訳もなくあんなことをするだろうか。
薄暗い路地裏から、知り合いに構うこともなく駆け出すなんて、まるで…
何かから逃げているようではなかったか？
今まで気にしていなかった周りの様子を確認する。
日は既に沈みつつあり、人気も多くなかった。
無意識に、ダイバーが飛び出して来た路地裏に目をやる。
「あ…」
追っ手が来るには、十分すぎる時間がそこにはあった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 19人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しゃぼん🫧 ｺﾛｲｶﾀﾞｲｽｷ - ニヤニヤ…。 (3月5日 18時) (
レス) @page33 id: 4cc781ec23 (このIDを非表示/違反報告)
あすあま(プロフ) - mariaさん» ふふ…毎度何かと世話焼きな彼、素敵ですよね！亀ペースですが、彼らの行く末を気長にお待ちくだされば幸いです。 (8月5日 23時) (レス) id: 5f256feba8 (このIDを非表示/違反報告)
maria - マスクくんの反応が気になるのでマスクくんお願いします! (8月4日 18時) (レス) @page35 id: 4c43ea808a (このIDを非表示/違反報告)
あすあま(プロフ) - アーミー好きさん» こちらこそキャラの魅力を感じてもらえて嬉しい限りです！今後もぼちぼち頑張りますので、是非ともよろしくお願いします！ (6月27日 19時) (レス) id: 5f256feba8 (このIDを非表示/違反報告)
アーミー好き - これとても好きです‼︎自分の好きなキャラだし自分の好きな展開というか...とにかく好きですありがとうございます‼︎ (6月27日 17時) (レス) @page35 id: 3264f1cacf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あすあま | 作成日時：2023年4月28日 4時
