コロイカ虐待

悪化 ページ16

3時間弱の動画だろうか。
肝心の犯人にはモザイクがかかり、声も加工されていて得られそうな情報はなかった。
それでもアーミーはその動画に釘付けになった。
気になる事があったからだ。
気分を悪くし、何度も目を覆ってしまいたくなるような残虐性を秘めたその動画を、彼は繰り返し見続けた。
メモを取り、資料にまとめ、マニュアルを何冊も取り出して考えた。
普段から見ているあのアロハが、顔を歪ませ、ひどく弱っていく様子、涙を浮かべながら抗う様子…そして何より、明らかに犯人側によって撮られたであろうこの動画。
アーミーはただ一つの結論に至った。

犯人の目的は、アロハを痛めつける事にあるのだと。

この動画によれば、彼の命を奪うことも容易い状況であると推測できる。
ならば、何故…
アーミーには、理解し難いことだった。
動画をアップロードした理由もおそらく、アロハの尊厳を傷つけるためであろう…
なんて、酷いことをするのだろうか。



「アロハっ！お、お願いだから…死なないでぇ…」
病室でぼろぼろと涙を流しながら必死に声をかけ続ける、ムギと、オクタグラス。
彼女らはアロハの容態の悪化の連絡を受け、急いで病室に来ていた。
アロハは、彼女らが見つけた当初と同じくらい青白い顔になっており、多くの医療機器に繋がれた状態でいた。
「ダイバーも、連絡に出ないし…あの動画も出回ってるしでさぁ…どうしよ、っか…」
小さく震えながらアロハを見つめるオクタグラス。
状況は最悪でしかない。
外傷は確かに酷かったが、殴られたり蹴られたりなど、命に別状はないものである。
医者からはそう指摘され、精神に致命的なダメージを負ったものだと周りの者達は思っていた。
…実際そうだった。
しかし、これは一体どういうことなのか。
まるで事件を興醒めさせないと言わんばかりに、彼の名誉をズタズタにするような動画がSNSに溢れ、原因不明で容態も悪化。
泣きつくムギに対し、静かに震えるオクタグラスは、心身ともに不安定になっていた。
「分からない…アロハ、どうして…」
今、周りでは彼の受けた仕打ちについて話題になっている。
心ない言葉をかける者がいたり、動画を目にして体調を悪くする者もいた。
それ以上に、当人の症状が悪化した事を知る者は、現時点この数人しかいない。
事件は何度も何度も世間をざわつかせることになる。

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