コロイカ虐待

傷 ページ13

答えは全て、アロハの隣に置かれているイカホにあった。
イカホの中の3時間ほどの動画に、アロハが受けた悪逆非道な仕打ちが全て映っていたからだ。
しかし、その動画はアロハが撮ったものではない。
明らかに加害者視点の動画だった。
動画は2本入っており、一つはほぼ真っ暗なもの、もう一つは加害者側にモザイクの入った、詳細部まで鮮明に見えるものだった。
悪趣味、という言葉だけでは済ませられない。
何度も溺れさせるところや、殴りつけてシャツで顔を拭いたり、ゲソをナイフで切り刻んだりするところ…
これらの様子が話し声や表情も分かりながらはっきり見れるのだ。
3人は動画を見て気分を悪くし、その後警察に証拠として出した。

結局のところ、アロハは助かった。
助かったのだが、心身ともに大きな傷を負った。
その傷は、決して簡単に治るものではなかった。
彼の見舞いには、たくさんのイカが来た。
憧れを抱くファンが大勢押し寄せたが、そのほとんどは追い返されることとなった。
少数の面会を許された者達も、彼の悲惨な状況を目の当たりにすると、なんと声をかければ良いか分からなくなってしまった。
見舞いには、S4も来た。
1人は甘いデザートを差し入れし、
1人は会話こそ弾まなかったものの寄り添った。
そして、1人は真剣な眼差しで励ましの声をかけ、誰もが彼をなんとかして元気づけようとした。
それでも、彼の心は治らなかった。
アロハは酷く病み、怒鳴ったり叫んだりはしないものの、ぼろぼろと涙をこぼしたり、唐突に過呼吸を起こしたりするなど、状況は深刻だった。

「アロハ…」
病室に入るダイバー。
彼の手にはフルーツの入ったカゴが握られていた。
「俺…さ、お前が心配で仕方なかったんだよ。だから、お前の不調も無理矢理指摘して、直させようとした」
そっとアロハの手を握って続けた。
「お前が誰にも言わずに必死に頑張ってんのに、それを根本からへし折るようなこと言って、ごめんな…俺たちがそこまで気づいてやれれば…」
「…」
ダイバーの目から涙が溢れた。
その涙は頬を伝い、アロハの手に落ちる。
「あ…」
アロハの肩がぴくりと動く。
「た、たすけて…ごめんなさい、許して…」
そのままダイバーの腕に縋り付いて泣き始めた。
子供のように泣く彼の姿を見て、ダイバーもまた、悲しくなった。
ゲソ全体を覆うようにして巻かれた包帯、無数に貼られた絆創膏やガーゼ、袖の内側に見える簡単には消えない痣…
非常に、痛ましかった。

大丈夫→←アロハ

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