繰り返す僕ら 2nd (ページ16)

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Story66 ページ16

「こ……？……おき、……こ、た…」

微かに聞こえる声は、聞き覚えがあって。

チョコのような甘い、あの人と同じ香りがする。

「宏太？起きて、朝だよ」

宏「んっ、あれ……A？」

珍しく、俺の部屋にいるA。

でもその格好をみて、一気に目を覚ます。

眉を八の字に下げて、笑うAは

いつの間に買ったのか、黒のスーツを着ていた。

「光くんたちと約束してるでしょ？」

宏「あぁ…いま何時？」

「9:00……かな」

宏「もう用意しないとな、起こしてくれてありがと」

お礼を言いながら微笑んだ俺に、また眉を下げて

そっと笑ったAに、胸が痛くなる。

Aと二人で、リビングに出て朝ごはんを食べて。

でも二人を囲う空気は、いつもとは違った。

どうして、Aはスーツを着てるんだろう。

あそこへ連れてくこと、まだ言ってないのに……

宏「A。今日行くとこさ、Aも一緒に来て

欲しいんだけどいい？」

「＿＿うん、いいよ」

今日のAは、ずっと困った顔して笑う。

いつもの花咲く笑顔を…見せてはくれない。

俺は、喪服に着替えて

宏「そろそろ行こうか」

ってAに声をかけた。

今日は、5月15日＿＿

俺の愛した、幼馴染みの命日だ。