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Story32 ページ32

2月の夜の風は、まだ冬の寒さを微かに残す

ひんやりとした風。



宏「あと、3か月後……か。」



5月15日。

あの人の、誕生日であり命日である日。

俺が、彼女に逢いに行く日。



胸元のペンダントに手を当てる。



寂しさがほんの少し埋まるような、埋まらないような

曖昧な感覚。



あの頃は、悲しみは引きずらないとか。

どうのこうの言っていたのに。



宏「なんで、こんな……悲しいんだろ」



引きずるのは、想いだけだと決めたのに。

決意は、当時の気休めにしかならなかったらしい。



__ガチャッ



考えを巡らす俺の隣で、扉が開く。



「なに、考えてたの?」

宏「なんだ……光か、」



そう言った俺の隣に来た光は、



光「なんだとはなんだ笑 このやろう」



と、言って笑った。

その笑顔は、あの頃と変わらない綺麗な笑顔だ。



光「ねぇ、薮」

宏「ん?なに、光」



また少し前を見ていた俺は、視線を少し横に向けた。

そこには、まぁ当たり前に光がいて。

でも、そんな光が儚げに見えて不思議に思う。



光「ねぇ、薮はさ。Aちゃんの誕生日聞いた?」

宏「え?なんで?」



突然の質問に、ただ聞き返す。

そう言えば、まだに聞いてなかったなぁ。



光「Aちゃんの誕生日さ。5月15日なんだって」

宏「………えっ?」



その瞬間、俺の中の時が一度止まる。

俺は、また悲しみに誘われそうになった。

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作者名:瑠璃華 | 作成日時:2021年7月17日 21時

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