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Story20 ページ20

宏「え……っ、A?」

「………っ!」



光に「おつかれ!」と短く叫んで、急いで

帰ってきた今日。


リビングに入った途端、目に入ったのは写真立てを

持ったまま座り込んで泣いているA。



遅かった、としか言いようがない。

俺の不注意だ。俺の、取り返しのつかない失態。



宏「A…なんで、泣いてんの?どうかした?」



ここに来てまで、どうして俺はこんな言葉を口にして

しまうんだろうか。



「ううんっ、なんでも…ない。大丈夫だから…

全然、気にしなくていいからっ」ニコッ



俺は、彼女に無理をさせてしまっている。

それはきっと、紛れもない…俺のせい。



宏「その…写真、でしょ?原因はさ…」

「ち、ちが…うよ!ね?違うから…」



誤魔化すように、焦るかのように。


俺の言葉に否定するAだけど……

それじゃ、納得いくはずもないんだよ。



宏「ごめん、ちゃんと言うから……っ。

ちゃんと、説明するから」


そういう俺に、Aは首を横に振るばかり。



「いいよ…っ、言わないでいいからっ」



離れないで……っ。 そう言ったと同時に

彼女はいくつもの涙を床へと零す。


そんな彼女を見るたび、あの人と重ねて。

あの人の最期を、思い出してしまって。



宏「大丈夫だから……っ、離れないから」



イトも何も見えない俺は…

Aの涙の理由を知れない俺は……




抱き締めて、そう言うしかなかった。

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作者名:瑠璃華 | 作成日時:2021年7月17日 21時

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