12(オペレーター目線) ページ13
私は病室の中で浅く呼吸をしている男性を見ていた。
何度もAとうわ言のように娘の名前を呼んでいる。
あの時、裏口に走っていた彼を止められていたらこんな怪我をしなくて済んだのだろうに。私は、彼の腕を掴んだのに振り切られて走って行く後ろ姿を追い掛けたが。遅かった。
バリケードをぶち破り、中に入った時点で父親はホワイトマスクが所持していたアサルトライフルで撃たれてしまった。
その場に血溜まりを作って倒れる父親を味方の援護を受けながら彼を安全な場所まで移動させ応急処置をしながら病院に搬送した。
病院の医者に任せて現場に戻ればレインボー部隊の味方は夜間に突入を決行し、娘を無事に助け出した。
礼儀正しく頭を下げる彼女に真実を伝えられなくて、今日は帰って寝るように伝え、携帯食料を手渡した。
丸椅子に座っていると右側の扉から少しずつ泣きじゃくり、しゃくりあげている声が聞こえてきた。
あぁ…昨日助けた子だ。
直ぐに弱々しい音を立ててトビラが開いていく。涙に濡れて車の鍵を握り締めている彼女は私を見ることなく一目散にベットに飛びついた
「お父さん…!」
ひっ、ひっ。と呼吸のおかしくなっている彼女を見ていると心臓を素手で握りこまれたような苦しさを感じる。
そのまま娘の呼び掛けに答えることも出来ず、3時頃に彼は息を引き取ってしまった。
彼女は20歳になる前に母親を亡くしていると聞いていた。
ゆかにへたりこんでいつまでも慟哭を上げている女性の小さな背中をさすった。
きっとこの子はこの先自分を責めてしまう。その前にわたしが止められなかった事を伝えなければ。
助けた人がまたどこかで死んでしまうのはもう見たくない。
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オペレーター・Doc
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作者名:憐 | 作成日時:2020年3月17日 13時