ほとぼり。3 (ページ10)

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心の中のモヤつきを取り払いたくて、身支度をして久しぶりに外に出る。玄関を開けるとすぐに差し込んだ日光は酷く眩しくて目を細めた

玄関のドアを見ると、落書きを消さずに溜め込んだせいでかなり酷い有様になっていた

この量はエタノールを買ったほうがいいかもしれない

外に出たついでに買おう

しばらく歩いていると近くでフェスが行われていたようで、沢山の人が集まり賑わっているのを遠目から見る

高校のときスンチョルとわざわざソウルまで来て参加したことがある場所だ

今みたいにちょうど冬で、寒かったのにスンチョルは愚痴の一つも言わずに着いてきてくれた

むしろ楽しそうにしてくれてて、それがすごく嬉しかったのを覚えてる

そのあとはカフェに寄ったんだっけ

確かこっちを曲がったところにあるはず

自然と足がその場所へ向かう

【OPEN】と書かれた看板が立てかけられているカフェの扉を軽く押すと、ベルのチリンという軽やかな音が鳴った

スンチョルと来た時に座った席がちょうど空いていてそこに腰掛ける

そしてあの日を再現するかのように、あの日注文したホットコーヒーを注文した

ふと窓の外を見るとぞろぞろと人が帰っているのが見えた。おそらくフェスが終わったんだろう。

その中で男女のカップルが幸せそうに手を繋ぎながら帰っている姿が見えて、それが当時の私達と重なる

もしも時間を巻き戻せたらどれだけ良かったか

出会ったばかりのあの頃に戻れたら、どれだけ。

［お待たせいたしました］

「ぁ………ありがとうございます」

店員さんの声で現実に引き戻される

テーブルに置かれたコーヒーは香ばしい香りと共に立ち上がった湯気がゆらりと揺れた

取っ手を持ってコップに口を付けると、あの日の思い出が蘇った