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自分が蒔いた種なのにやるせなくてスマホを閉じた
何されるか分からない恐怖心に包まれながら必死に歩き進める。少しでも止まったらダメだと本能的に思ったから
段々後ろの足音が大きくなって私のすぐ後ろに気配を感じた
心臓はうるさく鳴り響いてるし足は震えるし視界はぐらついて冷や汗も出てる
prrrrrrrrrr……prrrrrrrrrrr……
するとタイミングよく私のスマホが鳴り響いた
画面を見てみるとジョンハンからで、震える手で急いで電話を取る
「っあ、……ぅ」
助けを求めようと声を出そうとしたのにあまりの恐怖で声が出なかった
助けて。助けて。
ジョンハンは異変をすぐに察知したようで真剣な声色で私に聞いた
JH『A?今何処?』
バクバクとうるさい心臓で自分の声すらよく聞こえてないし、口が乾いて仕方ない中無理矢理声を絞り出す
「っは、ぁ…た、たすけ、」
JH『…絶対に電話切るな、今すぐ迎えに行く』
電話越しにバタンと扉が閉まる音と、走り出す音が聞こえた
ジョンハンに見つけてもらうためにせめて分かりやすい所に移動しなきゃ
ナビを再び開いて私が走り出すと、後ろの人も走り出して、いよいよ恐怖で涙が出た
何で、こんな目に遭わないといけないの
涙で視界がぐにゃりと歪む
事務所まであと少しなのに何処まで着いてくるのよ
JH『A、聞こえる?今近くに何が見える?』
「は、博物館っ…」
助けて、ジョンハン
竦んでもつれそうになる足に鞭を打ってなんとか走り続けていると、前からジョンハンらしき人が走ってくるのが見えた
JH「Aっ!!」
ジョンハンが私の名前を叫ぶと後ろの足音は止まった
JH「おい!待てよ!」
走りながら軽く後ろを振り返ると、その人は踵を返して走って逃げていた
ジョンハンが私の元に着くとその人を睨み付けたあと私と向かい合って心配そうな顔を見せる
JH「……遅くなってごめん。怪我は?何もされてない?」
「っだいじょうぶ…」
JH「どこが大丈夫なんだよ…」
そっと私の背中を数回撫でて歩き出した
JH「あんまり外で長居すると危ないから取り敢えず事務所行こう」
「…………うん」
ただでさえ身長差があって歩幅に差があるのに、未だに足が震え上手く歩けない私に歩幅を合わせているせいで、かなりゆっくりとした歩みだ
ジョンハンのさりげない気遣いに申し訳なさが溢れた
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作者名:環。 | 作成日時:2023年11月11日 2時