ほとぼり。2 (ページ40)

今日:78 hit、昨日:38 hit、合計:132,567 hit

89 ページ40

．

_________
_____

prrrrrrr……prrrrrrrrr.……

電話の呼び出し音でパチリと目が覚める

ふと顔を上げると窓から見える景色はオレンジ色に染まっていて、夕方であることがわかった

呼び出し人も碌に見らずに電話に出ると聞き慣れた低音が鼓膜を揺らした

SC『っ、もしもし？良かった、やっと繋がった…

何かあったかと思って心配したんだぞ…まじで……』

「ん…大袈裟だよ…

帰ってきてからずっと寝てたの。心配かけてごめんね」

SC『帰ってきてからって……

一日経ってるけど今まで一回も起きなかったわけ？』

…え？

スンチョルの聞き方に疑問を感じてスマホを確認すると、確かに既に日付は変わっていて日曜になっていた

本当に一日寝てたなんて。しかももう夕方だ。

寝惚けていた頭が一気に覚醒する

「あ〜〜、いや、」

ここで私が睡眠薬を飲んだから…なんて話したらきっと心配させてしまう

これ以上私のことでスンチョルに負担をかけられない

「…ちょっと、色々あって」

SC『なんだよ色々って』

「……そんなことより電話してきてどうしたの？」

SC『………ああ

えっと…どこから話せばいいのか……』

急に暗いトーンで口籠るスンチョルに不安が押し寄せた

SC『…まず、事務所側の対応としては公言しないことになった。とりあえず波が過ぎるのを待つらしい』

「…………………..」

SC『もし認めれば今以上に批判が来る可能性がある

Aにも、俺にも。

今後のことについて話したいから一度Aにも事務所に来て欲しいって代表に言われたんだけど、今から時間ある？』

「………………うん、あるよ」

SC『……ごめんな

俺がもっと周りに気を使えていればこんなことにならずに済んだかもしれないのに』

「謝らないでよ、もう…仕方ないよ」

なんでこうも私達は一筋縄ではいかないんだろう

一緒にいれるだけで幸せなのに、一緒にいることすら許されない

当たり前のことが当たり前にできない

覚悟の上だったけど、実際にそれを痛感して胸に言い表せない不快感が渦巻いた

もしも私とスンチョルが一般人同士だったらこんな我慢をせずに済んだのだろうか

お互い別の人と付き合ってればこんな思いせずに済んだのだろうか

もしも

もしも、

「…………………」

SC『A？』

　

　

「私達、出逢わない方が幸せだったのかな」

出逢わなければ。