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若干しんみりとした空気になりながら帰路に着く
スンチョルの両親からまた来てね、と色々いただいて少し多くなった荷物を持ち直そうとするとスッと横から荷物を取られた
SC「持つよ」
「あ…ありがとう」
深く帽子をかぶってマスクもしているため少し知らない人のように感じてそわそわする
SC「…あれ、靴紐解けてるよ」
「本当だ
…ごめん、悪いんだけどこのバッグ持っててくれない?」
スンチョルにバッグを持ってもらい靴紐をサッと結び直す
さっき人とぶつかった拍子に解けちゃったのかな
「よし、ありがとう」
そう言ってバッグを受け取ろうとするが避けられる
SC「いいよ、俺持っとく」
「スンチョル既に私の荷物持ってくれてるじゃん、それくらい持たせてよ」
SC「あんまり重いのばっか持ってるともっと背が低くなるよ」
「うわ。たった今スンチョルの背が著しく縮む呪いかけたから」
しばらく待っていると新幹線が来て、二人で乗り込む
大邱からソウルまでは2時間ほど掛かる
あまり話すと声でバレてしまう可能性があるから無言が続いて少し暇だ
座席に座るとさりげなく手を繋がられた
繋ぐと言うか、小指同士を絡めた感じ
スンチョルの方を見るがスンチョルは窓から見える景色を眺めているようだった
ほんのり赤くなっている耳を見て笑みが溢れる
今日一日フリーだからずっと一緒に居たいと言われたが、遅くまで一緒にいると今度は私を夜中に帰すことになるためそれも嫌らしく
結局今日は早めに解散することになった
宿舎に荷物を取りに行ったらお別れ。少し寂しいけど仕方ない
こうして会えるだけで充分嬉しいことなんだから、欲張らないようにしないと
一定で揺れるこの感覚に船を漕いでいると、そっと私の頭に手をやられスンチョルの肩に傾けられる
肩に頭を預けたままゆっくり見上げると、帽子とマスクの隙間から覗いた目と目が合った
少し目を細め、私の頬を指の背で撫でるとスンチョルも同じように私の頭に軽く自分の頭を傾けた
きゅ、と握り直すように動いた小指
スンチョルの行動全部が私の胸を愛おしさで包む
外で会話ができなくても
変装せずに堂々と隣を歩けなくても
こうしてスンチョルとの繋がりを微かに感じられるだけで、私は幸せ
カタンカタン、という音と少しの振動
隣にスンチョルがいるという安心感
目を閉じて、私は夢の世界に入った
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作者名:環。 | 作成日時:2023年11月11日 2時