ほとぼり。 (ページ50)

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お風呂場と脱衣所との温度差にふるりと体を震わせながらも服を着る

近くに置いていたスマホを見ると知らない人からの連絡が入って来ていて一瞬不審に思うが、内容を確認するとすぐに納得した

체리俺の名前の設定変えといたけど俺だから消さないでね?

まるでオレオレ詐欺みたいでつい笑ってしまう

A誰ですか?

そう返信するとすぐさま既読が付いて電話がかかってくる

いきなりのことに驚き間違えて終了ボタンを押してしまい、あっと声が出た

체리なんで切るの

Aごめん、間違えた

체리Aの声聞きたいのに

ドキッと胸が高鳴った音が聞こえた気がした

電話かけ直そうかと思ったがスンチョルはライブもあったし今日はすごく疲れてるはずだから寝かせないと、と私の理性が働いた

A今日もう疲れたでしょ、また都合が合ったらね

そう送ったのにも関わらず電話が掛かってくる

ああこれ私が何言っても聞かないいつものやつだ、と思い電話を取った

SC『もしもし』

電話越しに聞こえる低音にときめいてしまった自分が恨めしい

いくらなんでも理性が弱々すぎる。でもこんなに好きにさせたスンチョルが悪い

「もしもし？…早く寝ないと朝きついよ」

そんなことを言いつつ顔が緩んでしまう

SC『分かってるよ、少しでいいからお願い』

「しょうがないな〜〜？」

SC『声がすごい嬉しそうなんだけど？笑』

さっき会っていたばかりなのにもう会いたくなっている私はとことんスンチョルのことが好きなようで、そんな自分に幸せを感じた

それと同時に、またいつかこの幸せを失うことになるのかと思うと、言い表せない恐怖に息が詰まるような感覚になる

どれだけ話し合ったとしても、この先私の中の蟠りが消えることはないんだろう

「……………ねえ、約束して」

SC『……なに？』

この際、約束が果たされるかどうかなんてどうでもいい

「もう私の前から消えないって、約束して」

未来なんて不確かなものを決定付けないでいい

SC『………、

…………………うん、約束するよ』

スンチョルの立場を考えたら、果たされないことなんて分かってるから

それでもいいの

ただ、“今”を安心させて

「………ありがとう」

例えそれが嘘でも、貴方の優しさに抱かれるなら私は幸せだから