ほとぼり。 (ページ38)

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私のその思いが彼に伝わったのかは知らないが、次の日玄関を開けると彼が立っていた

SC「……A」

すぐにぎゅっと私を抱き締める

久しぶりに彼に触れることができて嬉しくなりそうになったけど、彼女達に見られてないかという恐怖心が勝って彼の胸を押す

でも彼は離してくれなくてむしろ抱き締める力を強めた

「は、なして」

SC「嫌だ。これ以上は我慢できない

もうずっと俺らこうして抱き締め合えてないよ

俺は寂しいのに、Aは違うの？」

それが本当は嬉しかった

だから彼に気付いて欲しがる強欲で汚い私が出てきたんだ

(本当は、さみしいんでしょ？)

違う

(彼の存在が遠くに感じて不安だったんでしょ？)

ちがう、

(何で私と彼の間にはこんなにも障壁があるの？って思ってるんでしょ？)

やめて

(本当は助けて欲しくて仕方ないくせに、

物分かりのいい女気取って馬鹿みたい)

SC「……A？どうし…」

「もうやめてよ！！！！！！！！！！！」

限界だった

私を上から下まで舐め回すように見る周りの好奇の目も

日々エスカレートしていく陰湿な嫌がらせも

罵詈雑言も、何もかも

全部が嫌になって逃げ出したくなって

思い切り彼を突き放して振り返りもせずに学校へ走った

彼からの着信と心配の連絡が来ても知らないふりして走り続ける

入学式の頃はあんなにあっという間に着いてたのが嘘みたいに、彼が隣にいない今は学校への道が長く感じる

走って、走って、走って

涙は止まらなかった

途中転けてしまって膝を擦りむいた

痛かったけど、私の胸の痛みに比べれば全然で

小さな子供みたいにわんわん泣いた