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「……貴方がどれだけ辛くて逃げ出したくなったとしてもそれを受け止めてくれる人は必ずいる
だから貴方はただ前を向いて走ればいいと思う
たまに後ろを振り返ってもいいから。
貴方と過ごす時間が減ったとしても周りはずっと貴方を支えてくれる
だから、どうか諦めないで」
SC「………………うん、うん、ありがとう…」
静かにぽろぽろと涙を溢す彼の丸まった背中をそっと撫でた
ずっと周りに言えなかったんだろう
練習生になることを選んだのは自分なのに、辛いから辞めるなんてこと
“周りに怒られるから”じゃなくて本当は彼自身が許せなかったんだと思う
「一人で抱え込もうなんて考えないでいい。もっと周りを頼って」
嗚咽を繰り返す彼は、私の言葉を噛み締めるように深く頷いていた
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SC「話、聞いてくれてありがとう」
「ううん、こちらこそ話してくれてありがとう」
泣いて少し声が低くなった彼は目の縁を赤くさせたまま私にお礼を言った
そろそろ帰らなきゃ、と思い別れを告げて帰ろうとすると腕を掴まれる
「どうしたの?」
SC「……あ、ごめん」
無意識だったのか自分でも私の腕を掴んだことに驚いていたようだった
私より高い所にある彼の顔をじっと見つめる
SC「また、会えるかな」
「うん?う〜〜ん、会えるんじゃない?」
SC「俺、毎週木曜のこの時間帯にいるんだ」
「そうなんだ?」
SC「会いに来て。約束」
スッと小指を絡め取られ親指を合わせられる
私まだいいよって言ってないのに勝手に指切りされてしまった
SC「じゃあ、またね」
数十分前と同じ人と思えないほど彼は吹っ切れたような顔をして笑って私に手を振っていた
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作者名:環。 | 作成日時:2023年10月25日 18時