ほとぼり。 (ページ26)

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「何に悩んでたんですか？ヌナに言ってごらんなさい」

SC「ヌナなんですか？年齢いくつ？」

「女性に年齢聞くなんてありえない。出直して」

いいから教えてよと言われ素直に年齢を教えると彼は驚いた顔をした

聞いてみると私と同い年らしい

歳が近そうとは思っていたけどまさか同い年なんてな

同い年と分かるとどちらからともなく敬語を外した

しばらくて彼が口を開く

SC「……俺、実は練習生なんだ

練習はきついし休む時間もまともにないからこんな辛いこと辞めたくて

だけどそんなことしたらきっと周りに怒られる」

「うん」

SC「友達と過ごす時間も減ったし、家族と過ごす時間も減った

全部放り出して逃げたくなって。

でもそんなことできないの分かってるから今こうしてここに座ってる」

どこか遠くを見ながら呟いていく彼の姿をじっと見つめる

自分から話を聞くって言い出したくせに実際に聞くとなんて声を掛ければいいのか分からなくなった

彼が辞めたいって言うのを果たして止めるのが正解なのかは分からない

けどなんだか辞めさせようとするのは違う気がして

「……私は実際にそれを経験したわけじゃないから貴方の気持ちは理解できない」

SC「…………………」

「誰かに悩みを話したとして慰められても結局それはただの情けで貴方の本当の気持ちを理解したわけじゃない

貴方の辛さは貴方にしか理解できない

だから私は『辛いね』なんて無責任な言葉は言わない」

SC「……うん」

今会ったばかりだけど、彼のことは何も知らないけど、本当に直感だけどこの人は周りに恵まれて育った

そんな気がしてる

だから、これだけは分かってほしい

「私が言えるのは、貴方は周りの人にすごく愛されてる

友達や家族と過ごす時間が減ったことを悔いるってことはそれだけお互いが大切にし合ってきたからでしょ

『関係』っていうのは一人じゃ成り立たないから」

彼の目が、少し潤んだ気がした