ほとぼり。 (ページ25)

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私が彼と出会ったのは高校入学前の春休みのこと

いつもは通らない道をその日偶然通って、その日偶然見かけただけ

いい天気にそぐわない暗い表情をした人が公園のブランコに俯いて座っていた

いつもだったら無視して通り過ぎてた

でも本当になんでか

その日のは私はその暗い表情をした人の元に近寄り隣のブランコに座った

歳が近そうに見えたからか、なんとなくほっとけなかったからかは今の私にも分からない

本当に、全部の偶然が重なり合って出逢った

「暗い表情してますね、何かあったんですか？」

SC「…………え……いや…何もないです」

何もない人はそんな顔しないのに。嘘を言ったことはすぐに分かった

「肩に手のひらサイズの虫ついてますよ」

SC「え！？」

慌ててブランコから立ち上がり焦ったように肩を見る

しかしいくら見ようにも虫がおらず更に焦る彼をブランコに座ったまま傍観する

SC「どこ行った！？とってください！」

「ええ？嫌ですよ」

SC「俺が一番嫌だ！」

「そもそも何もついてないですよ」

私がそう言うとしばらく停止したあと

私の言葉の意味を理解したのかジト目でこっちを見た

「………ついてたのは虫じゃなくて嘘！なんちゃって！」

SC「面白くない」

「面白さ求めてないから」

面白くないなんて言ったくせに彼はフッと笑みをこぼした

「せっかくそんなに綺麗な顔してるんだから暗い表情してちゃ勿体ないですよ」

SC「イケメンって？知ってます」

「言わなきゃよかったな」

すっかり調子を戻したような彼は顔色も良くなっていた

うん、そっちの方が似合ってる