ほとぼり。 (ページ20)

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彼を抱き締め返さず代わりに軽く背を叩く

「誰かに見られちゃうよ」

SC「………ごめん」

最後にぎゅっと強く抱き締め離れた彼は何とも言えない顔をしていた

SC「席とってあるから。こっち」

そう言って歩き出した彼の後ろをついていく

このお店は完全個室になっていて内側が分からないようになっていた

なるほど、芸能人がよく来るわけだ

個室に着くと彼が戸を開けてくれて私に先に入るよう言った

「ありがとう」

SC「うん」

向かい合う形で席に座ったが二人の間に会話はなくシンとしている

聞きたいことは沢山あった

どうして私の名前を聞いて席から立ち上がったの

私にあんな表情を見せたの

私をここに呼んだの

どうして、なんで私を独りにしたの

あの頃の私にとって貴方は私の全てだったのに

ずっと一緒に居るって言ったのに

私から離れないって

約束したのに。