ほとぼり。 (ページ19)

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「ありがとうございました」

［は〜い、気を付けて］

お代を払ってお店を見上げる

軽く調べた時に分かったけどここは芸能人の方がよく来るらしい

確かに格式高い感じする

スマホを確認すると少しだけ約束の時間から過ぎていた

謝らなきゃな

お店に入ると入り口付近にある椅子に腰掛ける彼がいた

彼は俯いついて最初私に気付いていなかったが、私が近付くと気配を察したのか顔をパッと上げた

視線が交わり彼が椅子から立ち上がる

SC「…A、良かった、来てくれないかと思った」

ふらふらと私に近付いてくるの見ながら「なんか少し背が高くなってるな」なんてぼんやり考えているといきなり体を包み込まれる感覚がする

「…え」

一瞬何が起きたのか分からなかったが懐かしい匂いがふわりと鼻をかすめ、すぐに彼に抱き締められているんだと理解した

私があげた香水、まだ使ってたんだ

SC「会いたかった…っ会いたかった、」

力強く私を抱き締める

腕を回すべきなのか分からなくて私の両手は宙を彷徨った

彼がちゃんと待ち合わせ場所にいた安心と久しぶりに彼の腕の中にいることに喜びそうになる私を

(私の前から居なくなったのは貴方の方なのに

今更なんなの？)

酷い私が、私の正気を戻すかのように囁いた気がした