ほとぼり。 (ページ14)

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頬に手を添えられたまま目元を優しく親指で拭われる

SC「手、出して」

そう言われて素直に手を出すとするりと指を絡め取られ恋人繋ぎをされる

懐かしい彼の高い体温と共に、忘れようとして塞ぎ込んでいた二人の思い出が蘇ってくる感覚にまた泣きそうになった

私の手を握りしめながら片手で慣れたようにサラサラとペンを走らせてサインを書いていく彼の姿を見て「ああ、アイドルになったんだな」なんて改めて思う

SC「今日は誰かと一緒？」

「…うん、誘われて」

そっか、と優しく微笑む

そこから無言が続く

だけどその間もジッと見つめられ、離さないと言わんばかりに私の手をぎゅっと握る

私もきゅ、と握り返した

この限られた少ない時間でお互いの存在を確かめ合うように

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もうすぐでスタッフから誘導の声が掛かるだろうと思っていると、不意に彼が私に顔を近付けた

SC「耳貸して」

「…え？」

私の顔のすぐ横まで来たかと思えば私の髪を軽く退かせ耳元で囁く

彼の吐息が耳にかかった

SC「俺のページ、すぐに読んで。

　

……待ってる」

　

「…は、どういう…」

スタッフ「次にお進みください」

聞き返そうとしたがスタッフに誘導され慌てて立ち上がる

彼の方を振り返って見るが「またね、A」なんて言って微笑んでいるだけだった