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ハッピーバースデー! ページ14



心なしかソファーに浅く腰掛けた。緊張とかではなく、警戒している。公の場で会うのも、モストロ・ラウンジでしっかり話すのも久し振りだ。ジェイドに淹れて貰った紅茶を飲んで落ち着く。


『そうだ、これ、プレゼントです。日頃の感謝も込めて。』


プレゼントをアズールに、花束をジェイドに渡した。アズールは「開けてもよろしいですか?」なんてわかり切ったことを言った。『どうぞ、』さっきまでの警戒心なんて忘れて、無邪気な彼の姿を眺めた。花束に興味津々なジェイドが目を光らせて訊ねる。


「ミヤコワスレ……ですね?」

『あら、山を愛する会の名も伊達ではないのね。』


返答になってないじゃん。フロイドの鋭い言葉を華麗に無視して、ジェイドは微笑んだ。フロイドは面白くなさそうに、「土臭い」と一言残した。それにしても、一緒に束にしてある青い薔薇よりもそっちの方に気を向けるなんて、流石ジェイドというか。


『花言葉とかは気にしないで。オクタヴィネル寮に似合うように揃えただけだから。』

「おやおや、そうですか。ではそういうことにしておきましょう。」

『意地悪なのね。』


ジェイドは「花瓶を取ってきます」と言って奥へ消えていった。そんな直ぐに飾ってくれなくてもいいんだけど。

包装紙を解いたアズールは、おおっと声を上げた。お気に召したようだ。彼の手の中にある硝子細工は、照明を反射して輝きを増していた。実はそれ、茨の谷から取り寄せたものだ。


『妖精が多い茨の谷は、銀食器の文化がほとんどなくガラス食器が主流なんです。』


マレ様の誕生日プレゼントを悩んでいた時、一緒に選んでくれたのはアズールだ。彼も食器などの類には並々ならぬ思いがあるそうで、あの時はとても助かった。マレ様はよく氷菓を召し上がるから、良い贈り物だったと思う。


『王宮御用達の硝子職人にオーダーメイドしたもので、一点モノの硝子細工ですよ。』


私の異様な語り口に、彼らはキョトンとした。しまった。転寮してからかなり口が回るようになってしまったから。気を付けよう。コホンと咳を零す。フロイドが何気なく核心を突いた。


「イルカちゃんは、その硝子細工っていうの好きなんだね。」

『………………さあ、』

「なんの間ですか。」


彼の突飛な質問には慣れているつもりだったが、やはり少し離れただけでこれだ。動揺しまくりの私に、アズールがそんなツッコミをしてきた。あまりこの話題には触れないでくれ。そんな視線を送った。

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作成日時:2020年10月2日 21時

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