飽きさせないでよ【シルバー】 (ページ13)

今日:3 hit、昨日:9 hit、合計:15,594 hit

ハッピーバースデー！【アズール編】ページ13

※時間軸は５章あたり？
――――――――――
Aside

店外まで聞こえてくる笑い声に、入っていいものかと吟味する。しかし、「ＯＰＥＮ」と看板を下げる辺り、とても彼らしい。遠慮なく店の扉を開く。足を踏み込むと同時にカランコロンと鳴り響く鈴の音に一瞬ビクッと驚くも、皆パーティーに夢中になり誰も気づいていないようだった。

これが客ならどうするつもりだ。去った寮と言えど、これは少しどうかと思う。基本群れたがらないオクタヴィネル寮と雖も、寮長の誕生パーティーとなるとある程度の賑わいを見せるらしい。いつしかのなんでもない日を思い出した。それもまた、去った寮だが。

賑わいの中心から外れた比較的静かな方へ、足早に歩いていく。コツコツという踵の音が目立つくらいに、寮生らが道を開けていく。片手に花束、もう片方には贈り物を提げて、本日の主役の前へ出た。控えめな照明に照らされて輝く彼の微笑みは、何だか悪巧みでもしているようだった。

『お誕生日おめでとうございます、アズールさん。』

「おや、まさか貴女が来て下さるなんて。」

機械的で胡散臭い微笑みを私に向けてきた。

嘘つき、来ると分かってた癖に。久し振りにちゃんとした場で彼と会ったのには訳がある。今日は彼の誕生日なのだ。招待状も頂いた。それなのに、来ただけでこの反応だ。お祝いだと言う日に彼を虐めるほど幼稚ではないが、彼の着ている服を指差して笑う。

『似合ってますね、バースデーボーイさん。』

「あは、イルカちゃんアズールのこと揶揄いに来たの～？」

『まさか、お祝いをしに来ただけよ。』

急にドシッと上から体重をかけられる。絞める、とはよく言ったものだ。プレス機に入れられるのってこんな気持ちか。あんまり重い為、彼の腕を軽く叩いてどかした。甘い声でおねだりしてもダメなものはダメ。『今はまだその時(・・・)じゃないでしょ』なんて言って焦らす。

寮生たちがざわつく中、アズールが気にしないで続けてと彼らに言った。彼らは少したじろいたが、暫くすると先程の様にまたパーティーに夢中になっていた。

「どうぞ、座ってください。」

『……そこですか。いえ、文句ではありませんが。』

彼が指さしたのは彼の間隣り。広いソファーを使っているのだからそこじゃなくたっていいだろう。持ってきた花束を押し付けるようにジェイドに渡した。薔薇の花弁が床に溶け込んでいくように落ちた。その花を見て、ジェイドはクスリと笑った。