- あの日の思いは。 ページ1
深い家庭事情があったとしても、理由がなくても。
あの日の私にとっては、ただ一般的な中学生としてのマセた気持ちだったのかな。
小学生時代によく言われる、「恋に恋してる」という言葉は、小学生限定じゃない。
きっと今、こうやって胸が苦しいのも、涙が出てくるのも、恋をしているんじゃなく、彼奴が好きなわけでもなく。
ただ、あの日の思い出と、昔の『友人』に会ったことに、感動してるだけ。
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『我を失う』って言葉を、初めて実感したような気持ちだった。
今までぼーっとしてたことなんて、こんな性格ならたくさんあったし、思い返してもなん十回も出てくる。
でも、一段と格好よくなった視界の中の彼奴に、たましいごと何処かに飛んでいったように、意識がうすくなった。
雑貨屋さんのぬいぐるみにじぃっと視線を寄越してる顔を体ごと振り返らせれば、彼の視線は私を捉えた。ぴたり、と。
なんともないような顔で一度外した視線をまた私に戻して、見定めるような顔をする。いわゆる二度見だ。
そののち、口を開いた。
「…………………A？」
「……ひさしぶり……………。テヒョン、だよね？」
私も思い出したように「あ、」と声を漏らしてから微笑む。こうすれば、この数年ものあいだ、一時も彼奴の名前を忘れなかったことなんて、気付かないから。
微笑を返してくれた彼奴を見て、不自然じゃないよ、って自分に語りかける。
うん、大丈夫。
"きみのことなんて、数年間忘れてたよ"って顔できてるよ。
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作者名：運 | 作成日時：2019年1月13日 11時
