【ブルーロック】五臓六腑がとまるまで【凪誠士郎】

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………でも、まぁ、その通りだな。その通りすぎて、あまりにも自分勝手に聞こえるけれども。
そもそもこんなまだ人が残ってる時間に飛び降りようとしている人間が居たとしたら、それもそれでかなり自分勝手だから。お互い様だろう。

よくよく考えてみればそれ程おかしい発言でもない気がしてきた。普通では無いと思うけど。


私が考え事をしている間も、その男子はうつらうつらと船を漕いでいる。本っ当に緊張感というものは持っていないらしい。なんだこいつ。


「……安心してください。私は死ぬつもりなんてないので。」

「……柵、超えてるよ？」

「や、べつに柵の存在に気付かなかった訳じゃないですからね？」

「…あ、そうなの。」


この人とこのまま会話を続けるとなんだか疲れそうな気がする。そんな予感があるけれども、しかし、不名誉な誤解をされるのはそれはそれでなんか癪に障るな、と。


「いい匂いがしたので、いっぱい秋の空気を吸い込もうかと思って、柵を超えてみただけです。」


そこまで言ってから。
よくよく考えると自分が言っている事もまた、まぁまぁ変な事だな。空気をいっぱい吸いたいから柵超えた、って、超変人じゃないか。


言わない方が良かったな、そう思った。のに



「……ん、確かに今日は、…いいにおいするかも。」


のほほん、という効果音が似合いそうな調子でふわりと笑った男子生徒にそんな風に返されて。
それにもまた呆然としてしまう。自分でも変なことを言った自覚があったのだけれど、どうやら彼は共感してくれたらしい。


この人は意外といい人……というか、なんだか、気持ちがいい人だな。そう思った。




これが多分第二印象。

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