【ブルーロック】君に夢を託したい。2【千切豹馬】

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俺の言葉を聞いた知崎は、数秒そのままぽかんとした顔をして、それからまたふわりと笑った。
知崎は意外とよく笑うのかもしれない。


「……千切さんって、優しいですよね」

「は？」

なんで今、この話の流れでそうなる？？
全くもって話の脈絡が違うだろ、そう言いたくなる。だってむしろ、優しいのは彼女の方だ。
優しいというよりは、知崎は穏やかで、想像力が豊かな気がする。彼女は当たり前のように話していたけれど、相手の立場に立って考えるという事を当たり前にできる人は少ない。
彼女は常に、相手の立場ーー。今は、俺の立場でどう感じたか。それをちゃんと想像して、相手の気持ちを優先して言葉選びをしてくれているのがひしひしと伝わってきていた。

「昨日も思ったんですよ、同じチームとはいえライバルの潔さんに、あんなアドバイスする所とか、その前もーー。私の組んだトレーニングメニューの意図をちゃんと汲んで、それから造り手のことまで考えてくれたんでしょう？」

「いや……見てたらわかるし、解ったから言っただけ。そんなの当たり前だろ、」

「っふふ、……そういう所です。」

知崎が何に対してそんなに嬉しそうなのかは分からないけど、そんなことよりも

堪えきれない、みたいな調子で声に出して笑った千切の笑顔を見るのは初めてで

(……かわい)

そんな風に思ってしまう。
彼女に対する罪悪感も申し訳なさも、彼女の過去を聞いて感じたくらい気持ちも、その笑顔だけでなんか全部かっ攫われてしまった。

……これがギャップってやつ……なのか？


彼女といると感情が忙しない。
まだ、知崎 Aという女について俺は何も知らないのに、彼女のことをもっと知りたいと思ってしまうのは、何故なんだろうか。

柔らかく笑う顔も、瞳に宿る闇も、全部、もっと知りたい、もっと見たいーー。

そんな気持ちになっている理由なんて分からないまま。俺は自分の感情に気付かない振りをしてそっと蓋をした。

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