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「それでも、もう一度期待に答えたくて、もう一度跳びたくて、必死にリハビリをして………本当に、その時は毎日必死で。もう一度、もう一度チャンスを掴めるかもしれないって所まで来たの。」

「……。」

「……でも、駄目だった。私のせいで、夢を叶えられなかった人達がいるのに、自分だけ夢を叶えようだなんて、ムシが良すぎたのかなぁ。こんな私を神様は許してはくれなかった。」


知崎は終始無表情だ。一見すれば悲しみも喜びもその表情には宿っていない。だけど、その目を見てるとこっちが泣きそうになってしまうくらい、痛々しい。

当たり前だよね、と呟く彼女の表情に影が落ちる。


「日本代表を決める大会の前日、練習中に軽い接触事故が起きて、それを避けようとした人が横で滑っていた私に衝突したの。その子の足が私のシューズを蹴り飛ばす形になって、そのまま…」


足に疲労が溜まっていなければそこまで悪化することはなかったんです、私の足はもう、蓄積された疲労や痛みで既にぼろぼろで。結局は自業自得ですね。全部。といって知崎は笑った。


「……悪かった、おれ、」
「…??なんで、千切さんが謝るんですか……?」
「なんでって、それは…、」


喉がカラカラに乾いて言葉が上手く出ない。世界という舞台で、大勢の期待を背負って。自分自身も大きな夢に目を輝かせて。夢を叶えるあと一歩のところで真っ暗闇に突き落とされた彼女の背負った絶望も、恐怖も、一体どれ程のものだったんだろう。そんな彼女に俺は、


「俺は、知崎を……傷つけただろ、」

え…?という小さな声が知崎の口から漏れる。顔は見れなかった。

『お前に俺の絶望が分かってたまるかよ』
昨日、知崎に俺が放った言葉を思い出して。
自分の吐いた言葉をこれ程までに後悔したことは、初めてだ。

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幸せうさぎ(プロフ) - ここさん» 嬉しいお言葉本当にありがとうございます!二次創作初心者の駄文ですが…!これからもどうぞ読んでいただけると嬉しいです! (2023年1月3日 14時) (レス) id: b10acb6a2f (このIDを非表示/違反報告)
幸せうさぎ(プロフ) - 琳さん» ありがとうございます…!シリアス展開が続くかと思われますが…、終わらせ方は決めているので完結までちゃんと更新するつもりです!とっても励みになるコメントありがとうございますっ! (2023年1月3日 14時) (レス) id: b10acb6a2f (このIDを非表示/違反報告)
ここ - 私もこういう作品めっっっちゃ好きです!応援してます! (2022年12月31日 20時) (レス) @page22 id: 9bac72a933 (このIDを非表示/違反報告)
- この作品私のドストライクです…。ありがとうございます‼夢主が選手生命を絶たれてしまった過去がある話とっても好きなんです。これからもずっと応援してます! (2022年12月26日 1時) (レス) @page18 id: fc92d0a6a4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:幸せうさぎ | 作成日時:2022年12月21日 23時

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