天資英明 file 2 ページ2
「俺が帰って来れる日は少ない。Aに倒れられたりでもしたら心配で仕事も手につかなくなる。頼むから無茶だけはしないでくれ」
真剣な顔で、懇願するようにそう言われてしまえば私にこれ以上無為な反抗をする気力など全く無くなってしまった。本当にずるい人だ。
何よりも私のことをこうして大切にするのは、亡くなった親友が残していった忘れ形見だから??それとも私を巻き込んだと負い目を感じているから???
そんな疑問が喉の奥まで出かかるけど。実際に聞けたことは無かった。だってもし、そうだと言われてしまったら、きっと私は深く傷ついてしまう。今度こそ、立ち直れないほど深く。
自分で保険をかけて線引きをすることで私は私の心を守っているのだ。
「……分かってるよ、でも私からもお願い、ゼロ。無茶をしないで欲しいのは…。私も一緒なんだよ。」
無茶しないでなんて言えないけれど、心配していることだけはわかって欲しい。
「……これだけは約束する。Aを裏切るような事だけは絶対しないから。」
絶対帰るとは言ってくれない。
分かっている。彼が絶対の約束をしなくなったのは、私が兄の事を「絶対帰るって言ったのに嘘つき」と酷く罵った時からだ。結局、絶対帰ると言って二度と帰らない人になってしまった。酷く悲しい思い出。
零くんは、私を悲しませない為の最善をいつだって尽くしてくれている。その微妙な線引きが、私達の関係性を酷く拗らせていた。
「………いってらっしゃい。」
「ああ、いってきます。」
彼の居なくなった部屋に、
私の泣き声だけが響き渡っていた。
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明里香(プロフ) - 推理も架橋じゃなくて、推理も佳境です。 (2022年12月17日 6時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
幸せうさぎ(プロフ) - 読む専ペンギンさん» 申し訳ありません。すぐ変更させて頂きました!教えて頂きありがとうございます!こういったミスへの指摘本当にありがたいです。感謝致します! (2022年8月10日 16時) (レス) id: b10acb6a2f (このIDを非表示/違反報告)
読む専ペンギン(プロフ) - コメント失礼します。二次創作になりますのでオ.リ.ジ.ナ.ル.フ.ラ.グ解除をお願いします。違反になってしまいますよ。 (2022年8月9日 17時) (レス) id: 6d42563f0a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:幸せうさぎ | 作成日時:2022年8月3日 11時