早くお父さんが死にますように (ページ27)

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その日の夜

年少組が寝たあとリビングで伊野尾くんとコーヒーを飲む

僕の隣に座って話し出した

「僕ね10歳の頃に学校の先生がみつけてくれて死なずに済んだんだよね」

『へ、？』

「葵くんも少し遅かったかもしれないけど、ここに来れて良かったじゃん。弟くんも」

ぼくは少し俯き、

『僕は、ここにいちゃ行けないと思います、

死ななくて済んだと思えなくて

それにっ、、僕はっ、、』

震える手を重ねる

すると、その手を包むかのように大きく細い手が僕の手を包む

「何があったのかは知らないけど、それはね、葵くんが虐待されて追い詰められたからそう言う考えになってるんだよ。

虐待はね、大人の都合や弱さが子供に押し付けられた結果なんだよ。

僕たちが悪いわけじゃない。」

そうかもしれない、、、

『でも、、』

『「僕がもっといい子だったら」』

驚いた。僕の言った一言と伊野尾くんが言った一言が重なった

「どんなに虐待されたって親は親だもんね。

親の愛が欲しい。…僕もそうだった」

『伊野尾、くんも、？』

その時だった

リビングの扉が開き志鶴さんが入ってきた

「あら。ティータイム？私も入れてちょーだい」

といいながら持ってきたのはチーズケーキ

「これね、慧くんが作ったのよ？」

『え！？』

「大したものじゃないよ。ただの暇つぶし」

『すごい、、頂きます』

一口食べて見ればものすごく美味しかった

『…おいしいっ』

「美味しいわよねえー」

「ちょ、2切れ目はやばいでしょ」

「いいの！！お腹すいてるだもの！！」

「だーかーらー太ったままなんだよ！」

「あーあー聞こえないー」

ここは暖かい。

家ではいつもなにかに追われていた。

毎日が恐ろしくて必死だった

つい最近までそんな生活をしていたとは思えないほど

ここは、僕にとって勿体ないくらいの場所

「葵くんはなんのケーキが好き？」

『僕はフルーツタルト、？ですかね』

「じゃあ、次はそれ作るからね。」

そう言って僕の頭を軽く叩いて部屋に戻って行った

『で、でも、、そんな！』

「葵くん。いいのよこういうのは素直に受け止めても。
慧くんがあなたに作りたいって思ったんだから。」

『、、、、』

「どんなフルーツを入れてくれるか楽しみねぇ！！」

『はい、、ほんとに、たのし、、っ』

その時、手のひらに落ちた1粒の雫