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2年がすぎた春、俺は退院した
治療という治療は全て行われた
認可された薬も試した
認可されていない保険の効かない薬も試した
それでもどこかの偉い研究者が書いた論文通り、病気は完治しなかった。
安静にしていれば自宅療養ができるようになったが、いつまた発作が起こるかわからないので働くことも無理な運動も止められた。
連鎖的に悪くなる心臓や内臓機能の負担を少なくするための食事制限が行われ、
入院期間で増えていった薬についても決められた通りに飲むよう厳しく管理された。
病院の外に出て俺は空を仰いだ
『空……青い………』
手を伸ばす。届きそうだった
掴めそうで伸ばした手を握りしめた
開いた手のひらをみて微笑んだ。
桜の花びらが乗っていた
それから家にかえり、自室で書類の整理を行なった
ふと手にとった通帳
開いてみれば障害者年金とかかれ100万弱の貯金があった
『これが年金か、、、』
身体を痛めつけられもらったお金
精一杯使ってやろうなんて考えた
でも、お洒落するために洋服や靴を買って自分を着飾ってもどこに行けばいいのだろうか
突然自由にされた自分にはどこにも行き場のない事実を突きつけられた
しんとした部屋、隣の部屋からは兄貴が流すお気に入りの曲と友達と話しているのか笑っている声が聞こえてくる。
俺は胸が震えた
病気になってどれほど兄貴を泣かせたのだろうか
もう二度と誰かを泣かせたくない
だから、、俺も泣かない
これから新しい生活で何が起ころうともう、兄貴を泣かせない
半分途方に暮れながら、もう半分で俺は自分への叱咤を続けた
ごめんな。兄貴。
誰よりも遅く生まれたのに、誰よりも早くしんで
ごめん。
残りは、8年
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作者名:まるです。 | 作成日時:2022年5月23日 1時