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しょうがないよと、凛くんは病人なんだから。
そんな言葉を紡ぐ彼女の口元に背を向けて俺は誰もいない個室で唇を噛んだ
込み上げる涙を深呼吸と一緒に飲み干すと、ストレスが鉛みたいにドスンとお腹辺りに落ちてきた
怒鳴る勇気のない臆病者
子供の頃からどんな場面に当たっても、結局、怒りも涙も笑って飲み下してしまう。
何をしなくとも自然と人に好かれる兄貴と自分は違う。
だから俺はいつも笑うことを選んできた。
嫌われないようにと注意をはらっているうちに、
保守的な立ち回りしかできなくなった。
それから近況報告などをして駅で解散をした
俺は笑った
笑顔は最大の武器。
嫌われないように、本当の自分を知られないように
最寄り駅に着くとすぐに家に帰らず商店街の端にある居酒屋に入り迷わずにビールと大量の食事を頼んだ
一気に運ばれてる食べ物
とりあえずビールを一気飲みする
食事制限を厳しく律して来た自分を見て見ぬふりをして今だけは思う存分に端から手をつけた
揚げ出し豆腐に手をつけ口に運んだ瞬間、苦酸っぱいものが喉の奥から競り上がってきた
ザワつくテーブルのあいまをぬけトイレに滑り込むとそのまま一気に胃の中の内容物を嘔吐した
心臓がはりさけそうなほど鼓動を上げ、前後不覚に陥っていく
ぐちゃぐちゃだった
涙と鼻水と嘔吐物が一緒に溢れ出して俺は嗚咽を漏らしながら便器を抱え込んだ
吐くものがなくなってもすぐに立ち上がれず便器を抱えたままぐったりとうなだれていた
買ったばかりのズボンがトイレの床に着いている
つま先から離れたサンダルが無惨に転がっている
見上げるとトイレのあかりがぼんやりと霞んで見えた
まだ熱い涙の粒がポロリとほほをつたい落ちる
やっと見つけた泣ける場所が居酒屋のトイレなんであんまりだ
気持ち悪い口元を手でぬぐ打と、、声を上げて泣いた
あんあんと子供みたいな泣き声が小さなトイレに響く
惨めに押しつぶされた俺は、ゲロより汚かった
恋なんかしない。期待しない。
ドラマじゃない本物の人生を歩まないければならない覚悟を忘れては行けない
死ぬことは怖くなかった
だって何が起きても確実に俺は死ぬ
エンドロールは決まっている。
そんな、気持ちを決めた翌日だった
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作者名:まるです。 | 作成日時:2022年5月23日 1時