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『ちょっと待ってください、言ってること矛盾してませんか?』


英「そうだね。けど結婚はする。国の人々にはそう伝える。」


『それで?』


英「だけど僕達は本当には結婚しない。」


『・・・つまり結婚したという設定で今後は暮らすけど、実際には結婚はしない、と。』


英「そう。国に混乱を招かないためだ。」


『条件はそれだけですか?』


英「いや、もう1つ。」


『それは一体?』



一瞬部屋が恐ろしい程に静かになり、空気が張り詰めた状態になった。



英「幸せになることだ。」


『え、それだけですか?』


英「うん。結婚を破棄するくらいだ。幸せになってもらわなくちゃ困る。」



天祥院様は目線を下にそらし、空になった皿を見つめていた。


少し寂しそうに。



『天祥院様はそれでいいんですか?』


英「あぁ。好きになった女性には幸せになってほしいからね。」


『え・・・?』


英「君を幸せにできるのは僕じゃない。彼一人だけだ。」


『好きって、どういうことですか?』


英「君の想像に任せるよ。最後に''恋人''として昼ご飯を一緒に食べれて楽しかったよ。」


『あ・・・、』



天祥院様は満面の笑みを浮かべていた。



英「話はこれだけだよ。あとはゆっくり凛月くんと相談することだね。」


弓「A様、部屋に戻りましょう。」


『弓弦さん!?いつからここに?』


弓「今この部屋に入ってきました。」



全く気づかなかった。

ドアが開いた音もしなかったし、気配も感じなかった。


私だけなのか・・・?



英「じゃあ弓弦、あとは頼むよ。」


弓「かしこまりました。さぁ行きますよ、A様。」


『ちょっと待って、弓弦さん!』



背中をグイグイ押されて天祥院様の所へ行けない。



『あの、色々ありがとうございます!てん・・・』



天祥院様と呼ぶのはもうやめようか。

どうやら私が思っていたよりもとても優しい人で、とても愛されていたらしい。


それなら彼に苗字呼びするのは失礼なのではないかと、勝手に思う。



『いや、英智さん!』



英智さんの方を見て、笑顔でそう言う。


最後に見た英智さんの顔は、目を見開いた後に、優しい目をして微笑んでいた。

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作者名:するめ | 作成日時:2022年4月4日 11時

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