『刀剣乱舞』主はのんびり主義

#29 ページ29

何があってこんなダメ刀がちんちくりんの近侍なんて

そうやってずーっと、あの子はまぁブツブツとうるさいです

お昼になったので休憩時間らしいのですが

僕に愚痴をこぼさないでほしいです





「ここが不満だ、これが嫌だと言えばいいではありませんか
　あの人のどこが嫌なのですか？」


「ちんちくりんの威厳もねぇやつを主とは認めたくないだけだ！」


「酔ってます？怒られますよ」


「っせぇ！甘酒で酔うわけ、ひっく」


「はぁ」





溜息が部屋を包み込みます

少し換気をしましょうか

扉を開けて、庭を見ながら小夜を待ちましょう

今日は書物を読む約束をしていますから





「部屋に籠っていてもじめじめと暗いだけですよ、こっちに来なさい」


「……俺の知ってる宗三は部屋から出なかったけどな」


「今の主は自由にさせてくれますから」





それなりの自由が約束されている人の体は悪くないと思っていますし

小夜に触れることも、兄様に触れることも、何かを楽しむことも

主に、前にはないほどの幸福をいただいたことも

……少し兄様に似てきたのでしょうか、和睦だと思ってしまいました





「宗三はいいのかよ、戦に出してもらえなくて」


「前とさほど変わりませんし」


「でも刀だったら戦に出るのが普通だろ、主から命を与えられて
　時間遡行軍と戦うのが今の俺たちの役目だろ」


「貴方自分の役目を知っていたのですね」


「うるさい」


「その心構えがあるなら、主ともう少し打ち解けてくれませんか？
　鬱陶しいくらい腹が立ちます、なんなら今からでも鉄に戻してもいいんですよ」


「ふん！」





甘酒を再び、ちびちびと飲み始めた

……どうしてこうも認めたくないんでしょう

あの人が……前の主の……信長を、忘れられないからですかね

僕にはわかりませんが





「宗三兄様、お待たせ」


「小夜！待ってたんですよ、今日は何の書物を読んでくれるのですか？」


「自分では読まねぇのかよ」


「僕は小夜に読んでもらいたいんです、黙っててもらえますか」


「はいはい」





小夜が持ってきたのは、桃太郎

むかしむかし、とゆっくり読み始めてくれました

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