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-リオside-
リオさん！Aさん！着きましたよ！
拓実くんの言葉で顔を上げると
タクシーの中で左肩にはAの頭。
やばい、寝ちゃってた…
「ちょっとA！着いたよ！」
隣のAを叩いても起きない。
「入っちゃってますね…」
困った顔の拓実くんがどうしますか？と
尋ねてくる。
「飲める状況じゃないわね…とりあえず家に運ぶか…
ったく、飲もうって言ったのAなのに！」
まあ、無理もない。
皆んなから大量に飲まされてたから。
タクシーの運転手さんにお金を払い
私より背が高いAを、拓実くんに
担いでもらう。
「……寂しいすっね。」
タクシーからマンションまでの部屋の道で
拓実くんがボソッと言う。
彼もかなりAに懐いていたから。
韓国に来たばっかりの頃、
とにかく不安そうな顔をしていて
ほっとけなかった。
自分からAの教育係を名乗り出た。
みるみると打ち解けて今では大事な親友。
「……寂しいに決まってるじゃない。」
拓実くんの背中ですやすやと眠っている
Aを見て、そう呟いた。
Aは、韓国にはあんまり帰らなかった。
節約したいからと言ってたけど、
私たちの会社は大手。
そこそこ稼いでるはずだった。
たまに見せるどこか不安気な表情から
なにかあるのかな、なんて思ってたけど
何故かそこを突いてはいけないような気がしていた。
エレベーターに乗り込み、Aの部屋の階に着いた。
「………リオさん、Aさんって何号室ですっけ？」
「え…305だけど」
拓実くんがエレベーターから出て、その先を
目を細めながら見ていた。
「……Aさんの部屋の前…」
そう言うから視線を前に向けて
Aの部屋の前を見ると、全身真っ黒の男の人が扉に
背中をつけて立っていた。
え、誰？
A彼氏いるなんて言ってなかったし…
しかも時間は深夜12時を回っている。
「ちょ、ちょっと拓実くん…不審者とかじゃないよね？」
「え…Aさんの彼氏とかじゃないんすか？」
え、できたのかな？
いや、流石に彼氏できたら気付く気がする…
「あんた、男でしょ！先行ってよ！」
「ちょ、怖いっすよ！」
拓実くんの後ろに回りながら会話していると
Aの部屋の前にいる男がこっちに気付いた。
キャップにマスク。
全身黒い格好。どっからどう見ても不審者で
私と拓実くんは目を合わせた。
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作者名：jina | 作成日時：2020年9月6日 0時
