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1章〜カンナと夏のはじまり〜 ページ2

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 段差の低いホームに足を踏み入れると、この駅では珍しい先客の姿が目に入った。その姿に俺は愕然(がくぜん)とする。
 それが、ここらで見ない顔なら尚更だった。
 白線ギリギリに立つその姿は、どこか儚げで美しい。

 ストライプ柄のワンピ一スに木々に溶け込むような翠緑(すいりょく)の上着。この風景に似合わない、真っ赤な花束を抱え、長い三つ編みを風に揺らしている。肝心の顔はよく見えない。それでも、同い年くらいだろう。
 ここら辺に住む人はみんな顔見知り。そう言っていい程に狭いこの町、彼岸町で、知らない顔の方が珍しい。

 それに、整備が行き届かないこの無人駅を使うのは、通勤、通学のサラリーマンに、学生くらい。休日に使う人の方がこの町では珍しいのだ。

 故に、彼女の存在は、俺の心を惹きつけた。
 電車の到着時刻まで、時間はあるというのに、少女は白線の前に立っている。
 直射日光が反射して、彼女の透き通る肌をより一層白く見せた。
 夏らしい生ぬるい風が肌にこべり付いて気持ち悪い。汗が至る所から吹き出す。
 よくもあの暑さに耐えられるものだ。

 コンクリートの床に初夏の光がまぶしいほど照りかえる。
俺は、近くのベンチに避難した。腐敗しかけた木製ベンチからは、痛々しい音が聞こえる。小さな動作ひとつでそれは、音を立てた。そんなことお構い無しに俺は、体を伸ばす。

 目の前に広がるのは群青色の空。
 のはずだった。澄み渡る青空を背景に紅い何かが目の前を横切った。
 
 花弁だ。
 二、三枚、生ぬるい風と共に空気中を踊っている。
 下から突き上げられるように心臓の鼓動が大きく鳴った。こんなにも胸がざわめくのは初めてだった。
 何故こんなにも胸を締め付けるのだろうか。そんなことが、俺に分かるわけもなかった。

*→←0章〜遠くにはいつも君がいた〜


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設定キーワード:恋愛 , オリジナル ,   
作品ジャンル:純文学, オリジナル作品
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助@でんこみたに(プロフ) - 赤菊 藍さん» ありがとうございます!頑張ります! (11月16日 16時) (レス) id: e967de5434 (このIDを非表示/違反報告)
赤菊 藍(プロフ) - このような作品はとても私好みでワクワクします!これからも頑張って下さいね。 (11月15日 15時) (レス) id: 729a63d6a3 (このIDを非表示/違反報告)
レンスイ(プロフ) - こちらの作品感想書かせていただきました! ご把握よろしくお願いします! (11月8日 11時) (レス) id: a25c9bfc08 (このIDを非表示/違反報告)
レンスイ(プロフ) - 情景描写が多く、厚みのある印象を受けました!駅の描写も細かく、語彙力があって圧倒されます! (11月8日 10時) (レス) id: a25c9bfc08 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - Noraさん» ありがとうございます。中学のクラスメイトがこんなでした。がんばります。 (9月20日 20時) (レス) id: 82ea27b76b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2018年9月15日 21時

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