検索窓
今日:81 hit、昨日:187 hit、合計:2,347 hit

八話 ページ9



──


出来るだけ教室から逃れた。
出来るだけ彼女らの視界に入らないように

入れないように、逃げた。


屋上のフェンスにもたれかかると
ガシャりと音が鳴って、少しだけ凹んだ。




「……眠」



いつまで経っても続く眠気に目を擦りながら
秋にしては、まだ光が強い太陽を眺めた。

すると、屋上にチャイムが響いた。


四限目の終わりを告げるチャイムだ。



やっぱり、教室以外だと少し時間が経つのが早い。
そう思っていると、屋上の扉が力強く開いた。





「…ッあ、A…!!」




鳥井が、昨日と同じように包みを二つ持って
息を切らしながら、私の方へ近付いてくる。




「どこ、行ったんか…探したでホンマ…」

「…ゴメン…」

「連絡、した方が早そうやったけどな…今更気付いたわ」




鳥井は苦笑して、私の隣に、同じようにもたれかかった。



「…な、メシ、食おうや」



そうして、緑色の無地の包みを私に差し出す。
少し汗が流れながらも、その口元は口角をあげていた。




「…ありがとう」

「よ、余計なお世話とかやったら…スマン…」

「……別に思ってないし。
 でも、何でこんなに声掛けたりすんだろとかは思うよ」


「まぁ、昨日聞いてもよくわかんなかったけどね」



包みを開くと、昨日と同じ弁当箱と割り箸が添えられていた。
苦笑した私を見て、鳥井は少し口をパクパクとしてから

再び口を開いた。




「…ちょっと前から、夢見るようなって…
 手遅れになる前に、って、言われて……」

「…よくわからん。
 でも、Aと仲良くしたいってのは…」


「…ホンマ、やねん」




鳥井は、酷く顔を赤らめた。
細長い綺麗な指で、顔を覆って。




「……それは、嬉しいね」

「あ〜〜…はっずぅ…
 今までちゃんと友達、できたことないから…」




鳥井は背を丸めて顔を隠してしまった。
私は割り箸を割って、右手に持ち替えた。




「…そっか。
 なら、いっぱい友達みたいなことしようよ」

「私も、もうそんなに友達いない」




惨めったらしい言葉だけど
こんなことを言うのは恥ずかしかった。

鳥井は少しだけ顔を上げ、私の方を見た。


その頬はまだ赤くて、茶色い髪が少しだけ靡いた。





「…っじゃあ、学校も、来て、や…!
 放課後、遊び行ったりも…!!」




「…うん、頑張るよ」




その言葉が、心底嬉しかった。

九話→←七話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (16 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
45人がお気に入り
設定タグ:d!、wrwrd , zm , 真下
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

真下(プロフ) - aiuさん» 嬉しいコメントと応援、ありがとうございます!よければ更新を楽しみにしていて下さい。 (5月1日 23時) (レス) @page16 id: d1da9a95a6 (このIDを非表示/違反報告)
aiu - こういうお話大好きです!このあとの展開がすごく気になります・・・・・・!応援してます! (5月1日 0時) (レス) @page16 id: dd6bafeb3e (このIDを非表示/違反報告)
真下(プロフ) - 桜の木さん» 嬉しいコメントありがとうございます!この後の展開もお楽しみください。 (4月30日 22時) (レス) id: d1da9a95a6 (このIDを非表示/違反報告)
桜の木 - すっっっっごく最高でした!!いい方向に変わっていってる夢主ちゃんと悪い方向に変わってるzmさんのすれ違いようが好きすぎます!! (4月30日 7時) (レス) @page14 id: 66418bc4e4 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:真下 | 作成日時:2024年4月14日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。