五話 ページ6
＊
──
まだ昼休みの時間は、残っている。
といっても残り十分もない。
でも、鳥井は職員室に用事があったみたいで
私は一人、先に教室に戻ることにした。
…正直、戻りたくはなかったけど。
「あ、Aじゃあん」
「……松宮、さん」
一人だと”彼女”が来る。
いじめの主犯、松宮菜那。
校則を無視したピアス、スカートの丈
先生も少し手を焼いている、そんな生徒。
「今日遅刻してたじゃんね。
たまに教室来ないしさぁ、せんせいも怒ってたっしょ」
「私らはアンタが来なくて良かったけどさぁ
せんせいはちょー機嫌悪くて迷惑してたでしょー？」
「私らもアンタがすっげー迷惑だと思うワケ！どう？
自分で理解できてる？」
松宮は、巻いた長い髪を指にかけ、くるくると回して
俯く私の顔を覗き、耳元で大きくそう言う。
少しキツい香水の匂いが、鼻の奥を刺激した。
「ちょっと菜那ぁ、Aさん泣いちゃうってぇ」
「勝手に泣いとけばいいじゃん。
コイツが泣こうが知ったこっちゃねーし」
そう言うと、松宮は私の前から消えて行く。
周りはクスクスと笑って、友達と目を合わせる。
なんで、あの場で消えることができなかったんだ。
「なぁ、お前さぁ、教室の入口
塞いで邪魔してんじゃないの？」
「ただでさえそんななのに、何突っ立ってんだよ」
名前も覚えていない、男子のクラスメイトが
少し遠くの席からなのに、わざわざ声をかける。
半歩、一歩、足を踏み出して席まで歩く。
「お、ようやく動いた」
「多分声掛けられないと動けないんだよ、アイツ」
「ヤッバ！自分で判断もできねーのかよ！」
ようやく着いた自分の席。
椅子を引くと、そこには虫の死骸のようなものが置かれている。
驚いて、少し後ずさった。
そうしたら、恒例のように笑い声があがる。
…何がそんなに、面白いのだろうか。
べちゃりと張り付いたその死骸を
仕方なく持っていた、ハンカチで拭いとった。
周りからはさらに笑い声があがる
一部の女子は、うえっと嫌な声を上げる。
「…A……」
「…戻ったなら、席着きなよ」
「あ…う、うん…そう、やな」
鳥井は、これに触れもせず、口元を歪ませた。
ちょうどチャイムが鳴った。
先生が入ってくると
皆はまた気怠そうに号令に続いた。
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真下(プロフ) - aiuさん» 嬉しいコメントと応援、ありがとうございます！よければ更新を楽しみにしていて下さい。 (5月1日 23時) (
レス) @page16 id: d1da9a95a6 (このIDを非表示/違反報告)
aiu - こういうお話大好きです！このあとの展開がすごく気になります・・・・・・！応援してます！ (5月1日 0時) (レス) @page16 id: dd6bafeb3e (このIDを非表示/違反報告)
真下(プロフ) - 桜の木さん» 嬉しいコメントありがとうございます！この後の展開もお楽しみください。 (4月30日 22時) (レス) id: d1da9a95a6 (このIDを非表示/違反報告)
桜の木 - すっっっっごく最高でした！！いい方向に変わっていってる夢主ちゃんと悪い方向に変わってるzmさんのすれ違いようが好きすぎます！！ (4月30日 7時) (レス) @page14 id: 66418bc4e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：真下 | 作成日時：2024年4月14日 0時
