検索窓
今日:55 hit、昨日:187 hit、合計:2,321 hit

四話 ページ5





鳥井は不思議な奴だというのが、今の印象。

今まで会話したことすら無かったのに
突然声をかけて、ご飯を食べようと言うから。


ほぼ初対面の私達が突然昼食を共にすると
会話はあまり続かず、屋上には時折静寂が流れる。



「…あの」

「ど…どうした?」

「何で、わざわざお弁当…
 私、何かしたっけ?」

「あー…そ、それは……」



何とか自分から開いた口からは
そんなことしか出なかった。

鳥井は、顔をあちらこちらに向けて考えた様子を見せ
少し口を噤んでから、口を開いた。




「……ぼくも、よくわからんくて…
 でも、なんか…関わらな、アカン気がしたっていうか…」

「じゃないと、後悔する気がしてん…」




私には理解が出来なかった。
鳥井が何を言っているのか。

鳥井自身も、ちゃんと理解しているようには見えないが。




「…何それ」

「さ、さぁな…何でやろ…」




顔を伏せて少し笑うと、鳥井は苦笑した。



高三になって始まった、本格的ないじめ。
クラスの皆は助けるより、乗っかる方が楽しいらしい。

主犯はクラスの人気者で、誰も咎めない。


そんな中、鳥井だけは私に何もしてこなかった気がする。
逆を言えば、助けもしない。


夏休みがあけて、もうすぐ一ヶ月が経つ今頃
どうして声なんて掛けたのだろうか。

聞いても、理解は出来なかったが。





「…な、なぁ、A…」

「…なに?鳥井」

「いっ、今更、やねんけどさ…!!」




「ぼくと、友達…!
 なって、くれへん?」





まるで告白のように、鳥井はそう言う。

高校に入って以来、言われなかったその言葉は
私にとっては、とても嬉しくて仕方がなかった。




「…逆に、仲良くしてくれんの?」

「あ、え、当たり、当たり前やん…!!
 ぼくから頼んでるし、その…」




聞き返すと、鳥井はものすごく焦ったように言う。
そんな姿を見て、また少し笑った。




「…じゃあ、少しだけでも、よろしく、ね」

「…!よ、よろしく!!」





その時、初めてちゃんと鳥井の顔が見えた。

五話→←三話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (16 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
44人がお気に入り
設定タグ:d!、wrwrd , zm , 真下
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

真下(プロフ) - aiuさん» 嬉しいコメントと応援、ありがとうございます!よければ更新を楽しみにしていて下さい。 (5月1日 23時) (レス) @page16 id: d1da9a95a6 (このIDを非表示/違反報告)
aiu - こういうお話大好きです!このあとの展開がすごく気になります・・・・・・!応援してます! (5月1日 0時) (レス) @page16 id: dd6bafeb3e (このIDを非表示/違反報告)
真下(プロフ) - 桜の木さん» 嬉しいコメントありがとうございます!この後の展開もお楽しみください。 (4月30日 22時) (レス) id: d1da9a95a6 (このIDを非表示/違反報告)
桜の木 - すっっっっごく最高でした!!いい方向に変わっていってる夢主ちゃんと悪い方向に変わってるzmさんのすれ違いようが好きすぎます!! (4月30日 7時) (レス) @page14 id: 66418bc4e4 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:真下 | 作成日時:2024年4月14日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。