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一話 ページ2






秋になったばかりのこの季節。
田舎景色が広がる無人駅に、私は一人居た。

澄んだ空気ばかりが辺りと肺を満たしていて
ここで死ねるのは、気分が良いと深呼吸をした。


通学用の鞄とスマホをホームの椅子に置き
数分後に来る電車を待つため

黄色い線の外側へ足を踏み入れた。




もうすぐ電車が通過する聞こえてくると同時に
二番線のずっと奥、集落が見える山の方から電車が見えてくる。


あと一歩、踏み出したら終わる。




世界が、一瞬止まったように見えた。




線路に、人がいる。

黄緑に近い明るい色の、パーカーを着ている
軽く頭を抑えて蹲っている男がいる。



最悪だ。




「…あの、危ないですよ」



別に声を掛けなくても良かったかもしれないのに
呆れと苛立ちを含んだ声色で声を掛けた。


奥から電車がどんどん近付いてくる。


蹲っている人は、私の声を聞いて顔を上げ
とても驚いた顔をする。


そして立ち上がり、口を少しモゴモゴさせてから叫んだ。






「あ…ま、まだ!!」

「アカンで!!」




そう叫んだ瞬間、電車が目の前を通過する。

線の外側に立っていたからか、普段くる強い風は
さらに強く吹いて髪がぶわっと上にあがった。


電車は通り過ぎ、あの人が居た線路を見る。



誰も居ない。



轢かれたと思ったのに、どこに行ったのだろう。

私は深く溜息を吐いた。
次の電車は一時間半後。

面倒極まりなく、邪魔が入った苛立ちは行動に出ていた。


一度ホームにある椅子に座ろうと振り返ると
椅子に置いてあるスマホが振動している。

スマホを手に取って液晶を見ると
そこには”W高等学校”と表示されている。


私の通う高校からだった。




「…Aです」

『やっと出たな。A、休むか遅刻なら連絡入れろ』

「すみません…」

『で、結局休むんか?それとも来んのか?』

「……行き、ます」


『なら、出来るだけ早く来いよ』




「はい、連絡もせず遅れて、すみません」




電話越しに一礼をした。
時刻は九時二十分過ぎ、学校では授業が始まっている時間。


椅子に座って、ホームの屋根を見つめた。


ただただ、憂鬱が私を襲っていた。

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真下(プロフ) - aiuさん» 嬉しいコメントと応援、ありがとうございます!よければ更新を楽しみにしていて下さい。 (5月1日 23時) (レス) @page16 id: d1da9a95a6 (このIDを非表示/違反報告)
aiu - こういうお話大好きです!このあとの展開がすごく気になります・・・・・・!応援してます! (5月1日 0時) (レス) @page16 id: dd6bafeb3e (このIDを非表示/違反報告)
真下(プロフ) - 桜の木さん» 嬉しいコメントありがとうございます!この後の展開もお楽しみください。 (4月30日 22時) (レス) id: d1da9a95a6 (このIDを非表示/違反報告)
桜の木 - すっっっっごく最高でした!!いい方向に変わっていってる夢主ちゃんと悪い方向に変わってるzmさんのすれ違いようが好きすぎます!! (4月30日 7時) (レス) @page14 id: 66418bc4e4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:真下 | 作成日時:2024年4月14日 0時

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