【d!】異形愛慕 (ページ7)

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六話ページ7

＊

自我

それは本来、アンドロイドには搭載されていないもの。

アンドロイドというのは、人間の為に在る。

自己意識なんてものは、不要だと考えられているらしい。

それを習うのは義務教育の時だ。

「自我…」

『そう。
　自我が芽生えただやねん。』

『”しんぺい神”であること、”ゾム”であることには、なんも変わりはないんやで』

面布に顔が隠れて見えないが
しんぺい神は少し、悲しそうな声色で

表情は少し曇っているのだろうかと思う。

『…自我が芽生えたら、アンドロイドは”故障”したことになる。だから、ここに連れてこられる』

『でも、悲しい方が強いねん。
　棄てられて、ヒトを恨む気持ちより、大好きなニンゲンに棄てられたっていう事実が、ただ悲しいんや』

ゾムは俯いて言う。

アンドロイドというものは、人間に遣えるモノ。

だから、元からニンゲンを愛し慕うよう設計されている。

だからこそだろう。

恨む気持ちもなく、ただ悲しいと彼らが言うのは。

『だからな、A見つけた時すっごい嬉しかってん！
　”お迎え”に来てくれたみたいで…』

ゾムが顔を上げて、歯を見せて笑う。

そんな姿に、申し訳なさを覚えた。

『…俺もね、Aちゃん。
　ゾムがAちゃんを連れてきて、怪我をしてるって』

『初めて開発者以外に、医療特化型として扱われたんだ。
　直接的に頼られたわけじゃないけど…』

『今Aちゃんと話しているのが、勝手だけど…
　患者様と”話”が出来ているような気がするねん』

胸に手を当てて話すしんぺい神を見て

私はまた、申し訳なくなった。