【d!】異形愛慕 (ページ42)

今日:100 hit、昨日:54 hit、合計:85,956 hit

四十二話ページ42

＊

──

あれから少し歩いて
トントンの部屋の隣から

情けない声が聞こえてきたため、顔をのぞかせた。

「……トントン？」

『あ、A。起きとったんやな』

「おはよう。
　…みんな、顔がやつれたね」

『トントンえぐいて〜…』

そんな長いこと話をしていたのか。

先程聞こえてきた情けない声はチーノだったようで
少しかすれた声が疲れを表している。

「お疲れ様…？」

『…A、癒してくれ…』

労いの言葉を一応掛けてみると
ゾムがヨロヨロとこちらへ寄ってきて

私の肩に頭をのせた。

癒す…

癒し方がイマイチわからないが
とりあえず頭を撫でていれば

満足そうに笑う声が聞こえてくる。

奥からはチーノが妬むような声を出している。

すると、ロボロが私の隣へ来る。

『ほんま、あんさんは甘やかし上手やで』

「そう…？」

『ゾムも相当喜んどるわ。
　…俺にもやってや』

ロボロは面布を少しずらして
八の字にした眉が、妬みを表していた。

同じように撫でろということらしい。

ゾムの頭に乗せている手とは反対の手で

ロボロの茶髪を撫でてみると
ゾムと同じように、満足そうに笑った。

『……オマエらなぁ、本来俺らは遣う側やねんぞ』

トントンがため息を吐いて
ロボロを退かして、私の隣に来る。

『………俺も、やって』

赤色の瞳が私を見つめた。
普段しっかりしているトントンが

少し身をかがめて縋る姿は
なんとも、ギャップがある。

ねだる声は少し小さく
恥ずかしいのだろうかとも思いながら

とりあえず、可愛いと思いながら
焦げ茶色の髪を少し力強く撫でてやった。

ヨシヨシ。

『…ありがとぉな、A……』

トントンが、はにかんだ。

「…今日なんか、みんな甘えたっぽいっていうか…」

『予感、やで。
　…もう、出ていくんちゃうかって』

ゾムが声をこもらせて言う。

私も、何となくそんな予感はしている。
チーノが来たこと、何か出口に関係があるかもしれない。

多分、その話はこの後グルッぺンがしてくれる。

「…その話を、聞いてくるから
　チーノ、着いてきて。話を聞きたいの」

『……わかりました』

ゾムを自力で立たせて
チーノに視線をやり、行こうと口にした。

チーノは承諾だけをし、2人で部屋を後にした。