【d!】異形愛慕 (ページ3)

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二話ページ3

＊

「…え？」

崩れた音の正体は
目の前のバケモノだった。

突然、プシューと音を立てて崩れ落ちたのだ。

淡く光っていた物体は光を灯さなくなり
頬に触れていたコードは力なく落ちていった。

私は状況が一切掴めずに
ただズキズキと痛んでくる頭を抑えていた。

『アイ…ぼ、して…タ、…
　ず…ずット…』

再び物体に光が灯ったと思えば
それだけを言い残し、バケモノは再び崩れた。

「な、何なの…」

頭は痛いし、状況わからないし…

今すぐまぶたを閉じたい気分だ。

頭から滴ってきているのか
服にも赤いのが染み付いていた。

『…壊れてるな』

「…な、に…」

突然、機械音が混じったような…
人に近い声が聞こえてきた。

それが聞こえてきたのは背後からだった。

部品をかき分けるように退かして
機械まみれの部屋に入ってくる声の主は

緑色のパーカーの下から茶色い長髪が見えており
長い前髪は目元を隠していて
その姿はどうしても怪しく見えてしまう。

『なんや？
　…ヒト、ヒト？』

「え、えっと…」

突然現れたそれにジロジロと視線をやっていると
それは私の方を見て顔を近付けた。

顔が近付いてようやく見えた、それの顔。

翡翠色の瞳で、随分と美形だ。

だが、天井にぶら下がっている淡いオレンジライトに
肌が照らされて、メッキのように光っている。

まるでアンドロイドのよう。

『なんでヒトがここにおるんや…
　年に数回来るか来ないか、わからんくらいやのに…』

それは私を見詰めてずっと呟いている。

私はどうしたらいいのだろう。

『あ、あの…！！
　名前！名前、教えてくれへんか？』

「な、名前？
　A、です…」

『A、A…』

突然声を荒らげたかと思えば
それは名前を教えてくれと頼む。

一応従い、名前を教えると
それは名前を何度も唱えた。

すると、小さな音で聞こえてきた。

『主の名前の登録が完了しました。』

「あ、あるじ…」

その機械音は、私が住んでいた場所で何度か聞いた音だった。