【d!】異形愛慕 (ページ19)

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十八話ページ19

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『ちょっとお話しとっただけやんか…！！』

『Aに触っとったやろ！！』

『いや、それやったらゾムやって…』

『俺はええねん』

『意味わからへん！！』

あの後、相当お怒りだったゾムは大先生に殴りかかった。

ゾムの拳は見事顔面にヒット。

大先生の頬には亀裂のようなヒビが入った。

今はトントンに直してもらっている。

『Aちゃん、ゾム酷いと思わん！？』

『…Aのためやし、な？』

「…殴るまでじゃない」

私が答えると
ゾムは稲妻が走ったような驚き方をして

そのままヘナヘナと崩れ落ちた。

『まぁ、どっちもどっちやろ』

『えぇ、僕ホンマにお話しとっただけやで…？』

ゾムの背中をポンっと叩いてやっていれば

トントンの部屋の少し奥から
紫色のストールを巻いているアンドロイドが出てきた。

『Aのことは聞いてるで。
　トントンと同じ整備特化型アンドロイドの兄さんや』

兄さんは手に持っていた部品をトントンの傍に置き、
私に右手を差し出した。

握手の意味だろうか、と
私も手を出して握ってみせた。

『兄さんは普段、廃棄場回って部品探してくれてんねん。
　せやからあんまり会う機会は無いと思うけど…』

『よろしくな、ご主人』

「よろしくね」

笑って返してみると

兄さんは爽やかに笑って手を離した。

『また少し離れるんは名残惜しいけど、
　廃棄場歩き回ってるから、また会ったらそんときは沢山お話してな』

”またな”

兄さんは部品を部屋の隅にやってから
そう言って部屋を出ていった。

『…よし、直し終わったで』

兄さんが部屋をでていってくすぐ、
大先生のヒビは直ったらしく

初めて会った大先生に戻っていた。

『流石トンちやわ。元の綺麗な顔に戻っとる。
　…ほな、一旦ショッピくんとこ戻ろ…』

『……大先生、ゾム』

大先生が何故か抜き足差し足で部屋を出ようとすると、
トントンは低い声で大先生を呼び止める。

床に突っ伏していたゾムも起き上がった。

『あぁ、Aはエミさんとこ戻っとき？
　悪かったな、付き合わせてもうて』

「大丈夫…ありがとう、またね」

『おん、またな』

先程のトントンとは全く違う
優しい声に本当に少し恐怖を覚えながら部屋を出た。

部屋から少し離れた先で
ゾムと大先生らしき悲鳴が聞こえたのは

気の所為とでも思っておこうか…