【d!】異形愛慕 (ページ12)

今日:142 hit、昨日:54 hit、合計:85,998 hit

十一話ページ12

＊

『…こっち来んなや、”シャオロン”』

『なぁ、ソイツニンゲンやん。
　いつ？いつ来たん？迎えか？』

”シャオロン”と呼ばれた彼は
私たちの方を見て仁王立ちをしていた。

私と目を合わせれば
ジワジワとこちらへ近寄ってきた。

『俺、100年近く待っててん…
　遅すぎるわ。なぁ、名前教えてや』

「な、名前…」

『そうや。
　ここに居るヤツらは皆、主を欲してんねん。』

『ダイスキなニンゲンが欲しいねん』

シャオロンの中黄の瞳が私を見る。

ゾムが私の前に立った。

『…ここに居るアンドロイドは、皆販売前に棄てられる。
　やから、皆主が欲しいねん。生涯懸けて尽くす主が』

アンドロイドは数百年前から
人間と共に生きていた。

人間は我が子や友人のように
アンドロイドと過ごしたが

現状は、こうなのか。

自我が芽生えたアンドロイドのことは習わない。

存在すら知らなかった。

「…A、私の名前」

『…A……』

ゾムは私に振り返って
”どうして？”とでも言いたげな顔を見せた。

『主の名前の登録が完了しました。』

『あるじ…主……
　…A！』

登録完了の音声が流れてすぐ
シャオロンはゾムを退けて私に飛びついた。

鉄などで成形されているカラダは
人間である私には少し重たくて…

「しゃ、おろん…！！」

『A潰れるわ！！』

まるで忠犬のような感じだ。

近所の犬にもこうやって飛びつかれてたことあったな…

ゾムがシャオロンを引き剥がそうとするが
シャオロンは一向に動かない。

「…シャオロン？」

『…充電が残り少ないです。
　スリープモードへ移行します』

シャオロンはそのまま
中黄の瞳を閉ざした。